私事ですが、投獄されました

獄入り初体験記 臨夏 2022.03.01

 2022年2月17日、朝8時、寝ていたらいきなしKが来た。大阪府警西淀川警察警備課やて。五人も入ってくる。聞けば、「詐欺容疑」という。寝耳に水や。「ぼくがしたんですか?されたんですか?」と聞くと、「したんや」という。ガサ入れである、聞いてはいたが、こんなものなんやなあ。

 詐欺は、かつて失業保険をもらいながら四か月バイトをしていて、その賃金取得が詐欺に当たるとのこと。思い当たることはあるし、弁明することも山ほどあるが、それはKサツで縷々述べた。皆さんのお耳汚しをするところではない。容疑44万円の「国家に対する詐欺」を素直に受け入れ、捜査にまかせた。

 しかし、家宅捜査する意味があるのか?社会運動のビラとか、スマホとかカードとか通帳とか障害者手帳とか、つぎつぎ持っていくんやけど?どうも様子がおかしいから、「これは詐欺罪に名を借りた政治弾圧ではないのか?」というと、Kは笑っていた。

 たしかに政治弾圧のようや。ぼくは政治党派には関わっていないが、障害者手帳を取り、失業し、生活保護を受けて出してからは、余った時間を利用し、幅広く社会活動をしている。そのぼくのスマホを抑えようという公安が背後におるのやろうか?

 「なんで資料を運び出すのか」の問いには、「カンパなんかで政治資金が流れてないか調査するため」という。知らんがな。あとから聞いたはなしでは、こういう政治資金絡みのでっち上げもようあるらしい。

 「逮捕はされないんでしょ?」と冗談で聞いていたら無言やったが、午前中に逮捕された。手錠をかけられ、ズボンも穿かさんと連れていこうとしよるから、抵抗する。ぼくは統合失調で、毎日薬を飲まんと死ぬから、連れていかれる前に薬を確保しようとしたら、いつも置いてる棚にない。Kが持っていったのやろうが、返せというても知らんふりしよる。

 あとは西淀川警察で何時間も取り調べを受け、福島留置所にほりこまれた。看守さん方は優しく、なにか味わいがある。権力に甘くしてはいかんのは言うまでもないが、権力を執行する下っ端、あるいは上役の権力者個人と、権力システムは分けて考えれないであろうか。ただ、「罪を憎んで人を憎まず」ではないんや。しかし人間、主体的な罪は個々に確かにあるが、権力構造というものは、人間主体の外側のシステムであろう。初体験の獄で、そんなことを考えていた。ぼくは在野の歴史家や。せめて、この体験を、地球に来た火星人歴史家の現地調査のつもりで観察し、歴史学構成に活かそう。フィールドワークや。まさに「獄入り意味オーイ:591‐1301」である。この救援支援センターの番号は、高校のころ、将来こうあることも予想して、暗記しておいた。今回これで刑事に告げれたし、弁護士さんと連絡できた。よう覚えとったわ。高校生にしては天才ではないか?(笑

 それから、検察や裁判所を連れまわされる。いつも護送車に乗るとき周りにKが20人も見送りで迎えしてくれるのはいかにも大仰やん。獄入り二日目の夜、寝ていたら23時半に起こされ、釈放された。これから最低10日拘禁、と聞いていたので意外やった。裁判所による拘禁却下が通ったようや。そら、こんな逮捕無理があるわ!

 以降、三日間は西淀川警察に出向いて取り調べを受けたが、聞けば任意らしいので、四日目からこの一週間、無視を決め込んでいる。家まで毎日Kが来て気持ち悪いが、ドアを開けない。

 今回、連れ合いは気が弱いので迷惑をかけている。おなじく障害者である。連れ合いは毎日しんどそうやが、政治弾圧も、貧困も、障害への抑圧も、独り相撲で対処してはいけない。連れ合いやぼく個人で立ち向かわなくてええ。問題は社会・資本主義社会にある。連れ合いとぼくと、友人たちとでスクラムを組み、勉強しつつ取り組めばよい。そんなことを考えたら、身体からむくむく気力が湧いてきた。ぼくは獄入り初体験、周りはウクライナ戦争。歴史家として、これらはともに近代末期に関わる諸現象のひとつや、とぼくは見ている。世界史の「人類前史」の終わりも近いのではないか?そんなざわつきも感じる。

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