#5 森本さん(後編)

そして森本さんは家でも頑張っている。
森本さんの脳内に常にある言葉は「節約」だ。
息子さんがライトオンかどこかで買ったトレーナーが3000円くらいしたと聞き、倹約家の森本さんに火がついた。ネットならばもっと安く買えるとネットサーフィンを繰り広げ、ZOZOならば同じトレーナーが1000円引きのクーポンを使ってお安く買えることが判明した。しかし時すでに遅し。森本さんは息子さんにちょっと怒って「も〜、ZOZOならマイナス1000円で買えたのに〜、ママに言いなさいよ〜」と言ったらしい。そんな調子なので、息子さんは、趣味のちょっといい自転車のどこかの部品が壊れた時、欲しいパーツを森本さんにラインで送り、森本さんはそれが1番安く購入できるサイトを探し出して代わりに注文する。旦那さんにおいてもそのように森本さんが代わりに購入するシステムらしい。
家族全員のスマホも森本さんが格安スマホ会社を全て調べ上げ、この家族で使うのに1番お得な会社とプランを決めている。2台目を持つとお得になるとかそういうのも活用するので4人家族だがスペアみたいな感じで余分なスマホやSIMカードがいくつかあるそうだ。誰かがその月のギガを超えてしまったら、そのスペアのスマホだかSIMカードを使ってピンチを乗り越えている。
そういえば森本さんは当時、新居(中古)に引っ越しをして、壁紙を自分で貼り替える方が安いからと自分でクロスを剥がしたり貼ったりして色々と大変だったらしい。こっちの角を合わせるとこっちの長さが足りなくなるとかそんな事を話していたような。新居の洗濯機の上に棚を設置することになり、旦那と実父だか義理父だかが何やらコソコソしているので、なんか怪しいと思い見に行くと、棚を取り付けるために壁に開ける穴を、間違えて違うところに開けてしまったのをせっせと隠そうとする二人がいた。その時も森本さんが「も〜、コソコソしてないでちゃんと言ってよ〜」と言うと、旦那さんが「言ったらお前はまたグチグチうるさいだろ」と言ってきたのでカチンときたそうだ。きっと旦那さんは何でも一生懸命に最適解(お得な)を探そうと奔走する森本さんに、少しやれやれと思っているのだろう。
森本さんは何を買うにも、どこで買うべきかネットで一生懸命探すので、お風呂にもスマホを持ち込み検索している。ジップロックにスマホを入れて湯船に浸かりながらネットサーフィンをするそうだ。しかし一度、湯船の中で疲れてウトウトしてしまい、ジップロック入りのスマホを少しお湯に浸けてしまったのか、スマホが壊れて買い換える羽目になったことがある。「無駄な出費よもう〜」

また、森本さんは毎晩2〜3時くらいに寝ている。

ある日、森本さんは家で着る用の薄くて暖かいダウンを探していて、東戸塚の西武の上のとこに良さそうなものがあったが、色がちょっと霞んだ辛子色のようなものしか見当たらない。ちゃんと見ていないので分からないが、ネットで調べてみるとその商品は他にカーキ、黒、ベージュがあるらしい。黒は森本さんには似合わない。私も森本さん自身もそう思った。カーキが良さそうだが、やはりそこはカーキ。ネット上の店舗在庫検索でもカーキはすでに売り切れていた。家で着るのであれば最悪色味が微妙だったとしても、気になるなら辛子色か何か分からないが一度試着してみては?セールで70%オフになるようだし、こんなにお得なことはない、と私は人が買い物するのを見るのが楽しいので軽い気持ちでアドバイスしてみた。森本さんは、そうよね、と言って次の休憩でそのお店に試着しに行った。しかし目当ての商品はどこにもなく、レジに並ぶお婆さんがそのくすんだ辛子色のダウンを持っていた。あぁー!!!と思った森本さんは、お店の人に在庫を確認してもらい、ベージュ、黒、くすんだ辛子色の3色が中央林間にあると教えてもらった。1番近くても中央林間。退勤後に急いで行けば間に合うかもと思ったが、森本さんは次の休憩時、下のスーパーで長ネギを買ってしまったのでさすがにエコバッグ3つと長ネギを刺したおばさんが中央林間でショッピング出来ないわと、そのダウンを買うのは諦めたのだった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?