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ヘルスケア業界のITエンジニアとはどんな職種か②

(1)ヘルスケア業界で利用するコンピュータシステム
ヘルスケア業界の特徴としてサービスや製品の品質が重視されるということは前回述べました。人の生命や健康を守るため、品質が重視されるという点は共通しています。医療の場合は、規制もありますが、どちらかというと事実として品質が要求されます。製薬の場合は規制が強く、品質保証が法令で要求されます。

(2)製薬業界で利用するコンピュータシステムの開発
上記のことがあることから、システム開発・維持管理においても、コストや納期以上に品質が重視されます。具体的には、ソフトウェア開発をする場合には、単に要件定義、設計、実装、テストという手順だけではリリースすることができず、上記の手順と並行して、妥当性検証(バリデーション)を実施することが多いです。データインテグリティ(データの品質)も問題になってきます。
また、リリースしたコンピュータシステムのリタイアメントまでのサービス提供(維持管理)は適切かという点も問題になります。
上記のようなことがあることから、製薬業界で働くITエンジニアの方は以下のような要素技術を学ぶことをお勧めします。
・GAMP 5、ITIL V3等の標準に関する知識
・日米欧のコンピュータシステム及びデータに関するレギュレーション
上記の知識は、ITエンジニアとしては苦手な方が多いので、上記を若いうちに身に着けてしまえば、大きな強みになります。
データサイエンティスト、バイオインフォマティクス、ケモインフォマティクスの方に進みたいという気持ちもよくわかりますがね。

(3)医療と製薬の壁
医療業界の代表的なコンピュータシステムは電子カルテです。電子カルテに保存されているいわゆるリアルワールドデータを、製薬業界の医薬品の安全性の管理や医薬品の研究(創薬)などに活用しようという議論があります。これを利用する際に、色々課題はありますが、レギュレーションの壁が大きな問題になります。製薬業界の厳しいレギュレーションを電子カルテのデータは遵守することができません。しかし、電子カルテには正確なデータも保存されていると私は思います。例えば、人が手で入力している病名データは確かに品質という意味では疑問符が付きますが、看護師さんがバーコードを読んで登録されている患者さんのIDと薬剤のIDは投与する直前にバーコードリーダーでベッドサイドで読んで登録しているので、正確なデータが保存されているように私には思われます。有害事象の有無が製薬業界的には重要なのですが、それは検査値や診察の文字データを深く掘っていかないと取得できないという話は置いておくとしても、変更前後値やタイムスタンプが正確であるか、電子署名されているかというような製薬のレギュレーションは必ずしも電子カルテのようなコンピュータシステムには妥当しないようにも思われます。
上記のような医療と製薬の壁というか課題が私が定年退職するまでに解決するのは難しいかもしれませんが、解決できるといいなと思っています。


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