舞台に立つべきか、舞台を作るべきか――2023年3月21日

5年ぶりに演劇の舞台に立った。

照明の熱さ、お客様の近さ、そして舞台の怖さと、大学時代の演劇サークルで感じたすべてがよみがえり、緊張と興奮と失敗と成功を経験して幕は降りた。

カーテンコールのお客さんの拍手が嬉しかった。

こんなオッサンを優しく受け入れてくれた座組との稽古が楽しかった。

足を引っ張ってばかりで苦しかったけど、辛うじてうまくいったときの仲間や演出家さんからの褒め言葉が何よりの糧だった。



ただ今回の経験から改めて、自分は表舞台に立つ人間ではないと分かった。

顔は良くないし、滑舌は悪いし、喋り方はむちゃむちゃしてるし、笑顔はみすぼらしいし、真顔は見れたもんじゃないし。過度に緊張して共演者を心配させるし、散々指摘されたことは最後まで克服できなかったし、できる努力の大半を怠った。

こんな人間がお客さんの前に立っては世の役者を頑張ってる人たちに失礼だ。


でも今回の演劇を通して「演劇を頑張ってる人を応援したい」という思いが強まった。


だから今後は運営スタッフとして携わろうと思い立った。

別に役者がダメだから裏方に…という消極的な理由ではない。自分の特質を考えるに、裏方のほうが適切だと思った。



自分はとかく答えのないものが苦手だ。逆に数学など必ず答えのあるものは得意だという自負がある。役者業は前者でスタッフ業は後者だ。

もちろんスタッフ業にも答えを出しにくい仕事はあるが、知識と論理性があればそれに近いものは必ず導き出せる。

でも演技は違う。どんなに発声を鍛えて参考書を読みふけって人間の心理を極めても、一生真理にはたどり着けない。その深淵が面白いという人もいるだろうけど、自分にはそれがツラかったりする。裏方業のほうが適してると考えた理由はそれだ。

だから先ほど、今回出演したイベントの運営スタッフへの参加を申し出た。社会人でも制作スタッフなどで参加が可能という表記が、応募に駆り立てた。

いまは返信待ちだが、もし参加できたら世の将来有望な演劇人達を陰で支えることになる。オッサンが我が物顔で表舞台に立って前途洋々な彼らの足を引っ張るぐらいなら、裏方の方が何億倍も気持ち的に楽というものだ。

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