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つわり香の話

こんにちワイナリー ワインにも関係すると思うけど日本酒のお話です。

TOP画はSAKETIMESで以前公開した記事のもので懐かいですね。良いですね。似てる似てる。

先程記事が公開されました。濾過とかそのあたりの話ですね。

TOP画もいいですね。最初モノクロの予定でしたがカラー化しました。

これは無濾過生原酒の良さばかり説かれている気がするので、そもそも濾過とか調整とはなんぞや?という部分をざっくり書いたものです。
無濾過生原酒は大好きですよ?弊蔵の生酒は無濾過生原酒だし、やっぱり美味い。が、荒かったり(粗いじゃないよ)するケースもあるので、火入したら美味しそうだなーと思うものを数c/s火入しておいて担当店にPBでどーすか?って流したりしてた。

炭濾過の云々などはもう議論し尽くされてはいると思いますが、対製造者向けには時と場合をしっかり見極めて商品設計したいよね、対消費者向けには無濾過生原酒の日本酒にゴミが入ってないっていうのは相当な奇跡なんだぜというあたりでしょうか。燗酒が美味しい季節、炭濾過の加水火入の酒も美味しいですよね。というか酒が弱くなってきたのか、こういうのも良いなと思う所です。

その記事を書いていたやりとりで、つわり香についてこの表現ってどうでしょうね?という話をしたのでその話をひとつ。

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日本酒の香気成分を勉強する、例えば唎酒とかの勉強をしていると「つわり香」というワードが出てくる。ジアセチル(年いった人はダイアセチルと呼ぶ)の香りだ。ダイアセチルの方がかっこよくて好き。
ダイハードかジハードか...違うか。ミッチェルとマイケルみたいなモンでしょう。ディーゼルをヂーゼルと書くようなモンだ。

むわっとした、チーズというか乳清のような香り。多いとダメな香りのひとつ。
ここら辺の香りは似たものも多く、表現も多様。
イソ吉草酸、イソバレルアルデヒド、酪酸...これに酢酸臭が混じったりすると、オエッ!

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そんな酒もあるんです。あるというか、一口美味しいと思った吟醸酒、大吟醸酒、純米大吟醸酒の唎酒の世界はこれの僅かな香りを捉えて「だめ!!」とするわけです。でも酵母やらが清酒製造の過程で必ず出しちゃうんですよ。なので、どの酒にも無いわけじゃない。大吟醸規格で考えた場合に調和してないのでだめ!って事です。
この審査企画にパスした鑑評会金賞酒はそらもう完璧なわけです。何をもって完璧かと言えば、この場に定められた規格に対して完璧ということかな。
まぁ、この鑑評会がダメかどうかの議論は置いておいて。

ジアセチルが「つわり香」と呼ばれる理由は先程出てきた「オエッ!」に由来します。このなんとも例えようのないジアセチルの香りを女性の鑑定官が「つわりの時みたいな感じ」と例えた事に由来したはずです。前の会社で上司が得意げに話してた。違ってたらごめん。ともあれそのジアセチルは「つわり香」と名付けられ鑑定官の間で広まって業界で一般化したわけだ。

その経緯はあまり知らずに唎酒の勉強をして、ジアセチルはつわり香だと覚えた人も多い事だろうと思います。僕もそうで、これで恥をかく事になりました。

ある年の3月、場所は酒田の鑑評会。本番の鑑評会に出す酒の選考会みたいなもので、秋田や山形の酒蔵から候補酒を持ち寄ってみんなで唎酒して、鑑定官経験者が講評する。その際、先に一般席(製造技術者たち)にもマイクが回されて2名くらいずつ講評する。この時にあんまり的外れな事を言うと恥をかく。鑑定官が「ダメな酒だ」と審査してるのに一般席で「金賞レベル」とか言ったら恥ずかしいねってくらい。

んで、ある酒の講評でマイクがまわってきたので私はね、「難あり つわり」と言い放ったんだ。


その酒は鑑定官方も「つわり」評がいくつかあって、それは良かったんだけど、なんかもの凄いアホさを発揮してしまったと思ってしまった。

ちょっと品が無いよね。

(その時はまだ)男ばかりの清酒業界で、なんの問題も無いのかー?と思ったものの、つわりも体験した事もないが、つわりって表現は下品じゃね?と荒れる酒田の日本海を後目に悶々と考えこんでしまった。

それがそれとして若い日本酒勉強したい界隈に広まってしまってるのもどうかと思うし、盲目的に学ばせちゃってるのも申し訳ないし。
つわりが悪い事では...ないのかどうか良くわかんないけど、良くわかんないのも失礼な話だし、だけどおっさんが「つわり」とか言ってるのは快くないよね。
つわる酒も快いものじゃないけど、それは良いんだそれは。

なので私は唎酒会なんかではジアセチルと言うようにしてるよ。
微妙な時は「ムレた香り」「むわっとしてる」「発酵でなんかダメだったんじゃね?」「香りにオフフレーバー」「えぱただかまり(津軽弁)」くらいに留めておいてます。

以上、チラ裏でした。