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決着

今回、日本酒職人の道を離れてクラフトサケの道に多分進んでいくにあたり、一度決着を付けておく話をしておきます。

僕は高校時代から酒づ...ゴホン...発酵に興味を持ち、今に至る。
今回はここまでの経緯は端折るが。

やりたい事は食べ物が自給自足の生活で、多分農業はチャンスがあれば出来る。しかし杜氏になる道のりは長いらしい。杜氏さんになるのが先決だなと大学卒業後にたまたま出てきた求人に手を挙げ、酒蔵に就職し、日本酒の道に入ることにした。


当時は酒蔵をやるとなると杜氏にならなければならないと思い込んでいたので、蔵元(経営者・社長)になるというのはすっ飛ばして考えていた。クラフトサケという概念も無かった時代でバカ正直に杜氏になるんだと頑張った。

造り酒屋は想像の通り昔ながらの職人仕事。職人の朝は早い...今は5:00スタートで麹室から始まり米の張り込み、水麹、槽操作、洗濯して、蒸してる間に朝飯食って、一服したら掃除して、麹米引き込んで、仕込作業して、酛仕込んで、分析、滓引き、粕はぎ、麹の種切り、掃除と帳面付け、仲仕事、タンク洗って、米洗って、麹の手入して、醪の追水、酛立て、酛おろし、出麹、明日の準備して、晩に打ち合わせ、それから仕舞仕事、一度家に戻って嫁のごきげんとりして、風呂入って、また蔵に戻って麹の手入で一日終わればだいたい21時半。1時間お絵描きして蔵で寝る。それで翌日5:00から仕事。毎年ポジションで仕事は変わるけど、だいたいこんな感じで秋田と兵庫で10造り過ごした。

やっぱりその中で得られた知見は現場感が強いと自負しているし、先達の杜氏や先輩蔵人、他の蔵の杜氏さん、蔵人連中、そして後輩からの意見はぶつけて磨いてきた。これは自信になってるよ。

さて、そんなわけで多分酒蔵を立ち上げるわけだが、枠組みがその他の醸造酒になる。つまり清酒から離れる可能性がある。これが果たして良いのか悪いのかの自問自答は3年くらい続けて答えは出した。


清酒かその他の醸造酒かなどは側から見たらどうでも良い問題で、その他の醸造酒ならその他の醸造酒らしくやるしかない。清酒に未練があるならば続ける方法を取るしかない。

そもそも清酒かその他の醸造酒かという区分は酒税法上の問題であって、そこに清酒っぽいかリキュールっぽいかどぶろくっぽいかの区分は無い。リキュールっぽい清酒もある、どぶろくっぽい清酒もある、清酒っぽいどぶろくも、どぶろくっぽいリキュールもある。
日本酒もライスワインを目指してるようなものもあるし。
なので、別にその他の醸造酒だったらその他の醸造酒ですよ!って言って堂々としていれば良い。

僕が描いたこのイラストなんすよこれと言って紹介して「あの絵描きさんっぽいね!」と言われてもまぁ、あざーすで片付けておけば良いのではないかな。ただ、相応しくない画壇に飾る事になったらそれなりの批判はあるだろうし、絵のわからない人から「AIで良いやん」「画力ないね」とか言われたらカチンと来たりはするだろうが。
なので、飲んでもらいたい人に飲んでもらったり、自分で満足できる範囲ならまぁ良いのではないかなと思ってる。
が、しかし、商売なんだよな。同人じゃないのよ。
だからそれなりのクォリティで造り続ける必要はあるだろうし、それなりの批判も覚悟しつつ、商売としてのルールは守らなければならないのは当然でしょう。ここら辺のジレンマ?は抱えながら連載というか商いをしなければならないよね。

それと生活がやっぱり大事だなと思ってる。
もちろん酒屋で生きていく、おまんま食って、ローンを払って、毎年生きていくのも大事だ。
ただ、やっぱりこの蔵人スタイルはカミさん持ってしまうと難しいなと年々感じてた。
独身だったら多分どこの酒蔵でもバリバリ働いて最高の日本酒を造って日本に、世界に打って出てやると意気込んでいると思う。寝る間も惜しんで闘い続けるファイターになって死ぬまでやってやると日本酒を造り続ける哀しき清酒酵母になっていたと思う。それくらい酒造りは天職だ。酒造るセンスもないわけじゃない。技術もあるし、知見はいつも酒蔵で一番だ。経験はまだまだだが、青いなら青いままで。
ただやっぱりカミさんは大事。これ以上泣かせるわけにはいかないんだよ。
んだもんで、カミさんが綺麗なうちは家にいてやろうと思ったりしてんだ。それだけ。
...結構美人なんだよ?今は猟師さん。今週も猪をとりました。


さて、話は変わるが。
寿司屋さんも同じような職人仕事だ。市場に自分で行ったり魚屋さん、仲卸さんに出向いて、目利きをして、買ってきて、さばいて、寿司を握る。お店の管理や掃除も多分自分でして、客相手にこれはどんな魚でこう握ったら美味いからお出ししました。お酒はこんなんでどうでしょうか。最近あったかくなりましたね。なんてやるんでしょう。
そのお寿司屋さんも、丁稚修行をしたりしたわけだ。多分。
がしかし、最近TVでもあるように3ヶ月で寿司職人になれるコースがあったり、ホリエモンも時間の浪費である寿司屋の修行はいらないみたいな事を言っていましたね。

私が歩んできた道は時間の浪費だったかと言うわけです。無駄は多かったとは思う。ちょっと立ち上げまで(まだ立ち上げてないが)時間は掛かった。気づきゃ33だ。20代で起業したらかっこよかったろうなとは思わない事はない。
だが酒造人生は長いからね。80なっても第一線を退かない名杜氏もいる。自分がどこまでどうやってやっていくかはわからないけど、とりあえず付け焼き刃で戦っていくのは厳しかろうと思ってここまではやってきただけの話です。寿司屋の話なら、自分の寿司屋で独立しつつ、自分なりにやりながら覚えれば良いというスタイルもありますよ?酒屋も然りでしょう。それはそれで良いと思いますよ。その人のスタイル。

ただ私は不器用なんで、ここまで時間が掛かったかなぁと思ってますよ。特に良い成績で大学出たわけでもないし、とても若くして頑張っているわけでもないしね。時代の寵児というわけでもなく、やっとこさここまで来たなという感じで今に立っているだけですね。

とはいえね、肩書きで酒造れるのか?という話で、酒なんて誰でも造れるとも思う一方、どれだけ修行しても造りたい酒は造れないと思う。造りたい酒はアップデートされていくでしょうし。
雇われ杜氏として、蔵人として、クラフトサケの醸造長とし、蔵元社長として、何らかの人として、やりながら探していくしか無いでしょうね。そうじゃないですかね?どうでしょ。
私は自分で美味しいなと思うものを、今の生活と向き合える範疇で造れたら幸せかなと思います。

もし生半可な酒が私に向かってきた場合は容赦なくぶつかりに行きますよ。拳で。
そのなまくら持ってかかってこいよ。

よし、これで決着だ。ぐだぐだポエム綴ってないで未来に向かって顔を上げよう。