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「とにかく松本の街が好き!!」デザインチームのミキさんが語る、松本とりんご音楽祭の魅力【ココが変だよ、りんご音楽祭vol.5 後編】

長野県松本市で毎年開催される音楽フェス、「りんご音楽祭」。14年目となる今年は5ステージに拡張し9月23日−25日に開催決定。

そもそも、「りんご音楽祭」って?他の音楽フェスと何が違うの?フェスのHow toとは?……etc

主催者のdj sleeperを中心に、その他の運営メンバーや、出演者へのインタビューなどを通じて、りんご音楽祭について紐解いていきます。お相手を務めるのは、2001年生まれのフェス初心者、長崎航平。根掘り葉掘り、りんごの魅力を探ります。

今回のゲストは、またもりんごの第一回を知る初期からのメンバー、セキミキさん。デザインチームとして、毎年のポスターデザインやその他ビジュアル制作などを行うミキさんにお話を伺いました。りんごの主催者であるdj sleeperにもガツガツ踏み込んでいくスタンスのミキさんとの収録は、終始笑いが絶えない回になりました。

「りんご音楽祭」という共通意識が動いている

長崎:ここまで回を重ねてきて思うのが、これだけ個性豊かな人たちがバラバラに動いているのに、りんごのいいところや魅力を聞くとだいたいみんな同じことをいうんですよ。それがすごいなぁと思っていて。街の魅力とか、会場のアルプス公園のこととか、夜の部の楽しさとか‥‥。sleeperさんがお話されていた、りんごの目指す姿に見事にマッチしていて。

セキミキ:私もsleeperに洗脳されてるのかな!? 怖くなってきた!(笑)

長崎:最近、一般参加者の方々へのインタビューの連載も始めたんですが、それですら共通する部分が多くて。みんな「りんご音楽祭」への共通意識がありますね。松本っていう街と、共通意識のもとでみんなが結束力をもってやっているから、もう「りんご音楽祭」は無くなりようがないですよね。

セキミキ:えっ、結束力は無いよ?

長崎:あ、そうなんですか?(笑)

セキミキ:全然無いよ。ほんとに、バランスだけでやってると思う。いつどうなってもおかしくないの。

長崎:だとしたら、奇跡のバランス力ですね。

セキミキ:うーん、どうなんだろうね。フォーメーション力?

長崎:前回の志村さんは、ここ10年ずっと運営でやってきてて、コロナもあって今は外の立場からお手伝いしているわけですよね。その分、今年は僕が入ってきていて、これもバランス力というかフォーメーション力の成せる技なんでしょうか。

セキミキ:それもきっと、何かしらの共通意識が働いているよね。sleeper自身も、きっとそれに動かされてる。「りんご音楽祭」って共通意識が勝手に動いているんだとしたら、こっちは抗いようがないし、そう思うとみんな楽だよね。

りんごの仕事は5秒で終わらす!!

セキミキ:私はほんとに松本の街に育ててもらったと思ってるから、やれることやろうと思ってきたんだけど、りんごに関わるのは今年が最後でいいかなとも思ってて。

長崎:え! 第一回からりんごを支えてきてくれたのに!?

セキミキ:私は、2018年で全てやりきってるの。2019年は妊娠していたからふわっとやって、2020年は出産、そしてコロナが始まって、2021年。ずるっときちゃったかなって感じがするの。今年は、デザインチームに20代の若い子が来てくれたから、これからは任せていきたいなぁって。

長崎:僕は今年から入ったので、過去のことはあまりわからないんですが‥‥。さっきもsleeperさんと「次のパーティーのフライヤーを来週までに」とかお話されてましたよね。それって普通のフェスの仕事ではきっとありえないことですよね。

セキミキ:ほんとにそうだと思うよ!ありえないよ!(笑) sleeperは決まったことはすぐ告知したいからね。普通だったら「こういう案件があります。お願いできますか?」っていうところを、昼過ぎに連絡がきて、「明日の16時までに!」とか平気でいいますよ。あの人は。

長崎:なかなかですね‥‥。

セキミキ:最近は「難しかったら明後日で大丈夫です」とかついてくるけどね、最初の頃はそれすらなかったから毎回ぶちぎれてた。人権無視じゃん、あたしの。だからね、どんどんりんごに対して時間を使うことがよくない。とにかく、「りんごの仕事は5秒で終わらす!」って決めてた。だって、「2時間もかけたのに!」とか思うの嫌じゃん。

長崎:5秒で終わらす‥‥!

セキミキ:もともと、「りんごをゆるふわフェス風にする」っていう流れがあってね。だから、デザインもちょっとダサいくらいがいいよね!って手を抜き始めたの。そうやって来すぎちゃったから、ここはもっとデザインに愛がある人に譲ろうかなぁって。

長崎:そのお話、前回の収録で志村さんから聞きました。来てくれるお客さんをどうやって当日まで騙すかが作戦、っていう。でも、それをやるってことは会場に来させることさえすれば勝ち! って自信があるからこそできるわけで。

セキミキ:自分たちの作ったものに対してだけじゃなくて、りんごに来るお客さんたちに対しての自信もあるね。お客たちさんが、松本を、そしてりんごを見つけて、ここまで来る。初期のりんごのお客さんたちのレベルが高かったんだよ。上手に遊んでくれる人たちがいる! って自信が私たちにはある。

「りんご音楽祭」は部活?

長崎:いわゆる大規模なフェスって、東京の会社が郊外の会場を借りて、数日間だけ開催されるけど、「りんご音楽祭」は、松本の街に住んでる人たちが運営していますよね。

セキミキ:そうだね。そういう大規模なフェスで働いてる人たちって、きっとその「フェス」自体が好きでやっているんだよね。りんごはそこが違うのかも。りんごが好きっていうか、この街が好きだし、この街に遊びに来る人たちが好き。だからこそ、「りんごサイコー!」ってみんなが思ってる。

長崎:前のエピソードで、志村さんも「俺は仕事としてりんごをやるんじゃなくて、当日にどれだけ自分がアガれるか」しか考えてないってお話してくださいました。だから友達としか仕事できないし、ビジネスとして割り切ればうまくやれる部分も、ついこだわってしまうと。

セキミキ:「遊ぶため」にやってるって思った方がハッピーですからね。そこで相殺するしかないんだよね。私はデザインチームだから、当日何かのトラブルがない限りフリーなんだよね。妊娠するまでは本当に誰よりも遊んでた! 

長崎:「りんご音楽祭」があるから、松本の街にみんなが来てくれて、みんなで遊べると。

セキミキ:そう、そういう部活! この部活のインターハイあったら俺たち勝てるよね!!って思ってる時がある。ふふ(笑) それくらい、みんなが好き同士だから。

長崎:でもやっぱり、それゆえの難しさも多いですか?

セキミキ:みんなで何かを作るってなるとね。それはもうしょうがないよね。こないだもsleeperにほんとに失礼なことされてキレたもん。

長崎:なにされたんですか(笑)

セキミキ:もうねぇ、あれは……sleeperってね、気持ちにまっすぐだから、最初に言ったことと、違うことを言いだすんだよね。いやわかるよ、でも周りにどう説明するの? って。

長崎:sleeperさん、最初から「俺は自分を信用してない」って明言してますもんね。

セキミキ:ずるいよね。あいつはそういう防御法をこの10年で身につけたね。でもさ、アーティストとか芸術家って大抵変な人じゃん? sleeperなんかと一緒にするのはあれですけど。変っていうか、周りが大変だね! そして、周りがみんな大人なんだと思う。

長崎:sleeperさんってあれだけ表に立つ存在で、大きいフェスの主催者なのに、みんなsleeperさんのことを信用してない感じがしてて。

セキミキ:そうだね、みんな自分を信用してるよね。ここは俺がやるから大丈夫って。

長崎:sleeperさんは、外側から見ると華やかなフェスの主催者ですけど良くも悪くもめちゃくちゃ「人間っぽい」方ですよね。あれだけ大きなフェスで、あんな人間っぽいひとがやっていること自体がりんごの魅力なのかなと思っています。

セキミキ:ほんとにそう! 人間ぽい! それはね、sleeperに関わらず、りんごのメンバー全員がそうだね。要は、「持ち味」だけでやってるからねみんな。「俺の持ち味はこれ、お前の持ち味はそれ」ってみんなの「持ち味」を持ち寄って、形になってる。でもきっとそれが一番いいことだよね。sleeperは「すげぇムカつく嫌なやつ!」って持ち味をやってくれてるの。

長崎:持ち味! なるほど…。みんなsleeperさんにダメ出ししますよね。何十年もトップをやっているのに、あの立ち位置でいる人って貴重じゃないですか? 普通は、えらくなるにつれて、下の子や若い子が何も言えなくなっちゃう。

セキミキ:みんな言えてるかなぁ、大丈夫かな。

長崎:「瓦レコード」のスタッフさんたちとか見てると、言えてるはず、です。

セキミキ:スタッフの子達は言ってるね。でも、まだ彼の周りで何か言えずに傷ついてる子がいないか心配だなぁ。

長崎:でも、そういう人たちの分まで瓦レコードのスタッフの子たちがみんな言ってくれてる感じがありますね。

セキミキ:最高だよね、あの子達! ほんとに。うん、言ってこ! 思ったこと言ってかないとね、損した気分になるし、体に良くないから。長崎くんもお金はもらってるだろうけど、sleeperに雇われてはいないんだよ! sleeperをうまく使って、航平くんのやりたいようにやればいいの。

長崎:なるほど、そうか。

セキミキ:でもそれがね、sleeperはうまく使えないんですよ(笑) ほんとに強情なの。強情な上に、毎回「えっ、それ人としてどうなの!?」って爆弾を投下するの。だから私は、sleeperにちゃんとキレながらデザインをやるのが私の持ち味だし役割だと思ってやってきた。

長崎:なるほどなぁ。いやぁ、こうやって主催者のそういう部分をがっつり話してくれる方がなかなかいないのでありがたいです。

セキミキ:過去の収録聞いたけど、全員おじさんでむずかしい!(笑) すごい真面目なこと喋ってた。私も勉強になりました。

長崎:これまで、そういうフェスの裏側って語られてこない部分だったと思うので面白いです。

セキミキ:知りたい人いるのかなぁ。

長崎:昨日「瓦レコード」にきていた名古屋の若い子たちに、「podcast聞いてますよ!」って言われたんですよ。

セキミキ:そうだよね。今回、航平くんがこういう企画をしてくれたおかげで、航平くんみたいな子がこれを聞いてくれて、りんごに来てくれるってことでしょう? すっごくうれしい! ちょっとまじめな子が増えるんだよね、これからのりんごは。

長崎:人間っぽいだけじゃなくてね(笑) でも、こういう作っている人たちの声に共感して、りんごに魅力を感じてくれている人たちがいるんだとしたら、そういう人たちにたくさん来てもらいたいです。では最後に、聞いてくれる人たちにメッセージをお願いします。

セキミキ:ぜひ、試しにパトロールに来てほしいな! みんな「りんご音楽祭」良いって言ってるけど、どんなもんなんだろう? くらいの気持ちでね、気負わずに。それで、自分なりに遊んでみて、上手にできた! って思い出を作って欲しいです。

長崎:僕も、僕なりのりんごと松本の遊び方を見つけたいです! ミキさん、今日はありがとうございました。


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