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トコトン理念会議【ゲスト:久保山さん】

理念は日々の仕事にどう活かされていますか?

【トコトン理念会議とは】
企業や組織にとって理念が大切だ、必要だと言われます。理念について少し調べると、確かにそのように感じます。でも少し、本当にそうなのかなという思いも抱いたりしませんか?理念についてどれだけ本当に理解しているのでしょう。固定観念や先入観なく理念について学び考え、そして、学び考えたことを発信する。それが理念会議です。理念が本当に役立つものであるなら、企業経営や組織運営そして日々の暮らしにまで、理念を生かすことを考えていきます。
https://rinenkaigi.biz/

中野--

こんにちは。第4回目の「トコトン理念会議」を開催します。今回はパナソニック電工にご勤務の久保山武さん(以下: 久保山さん)にご登壇いただきます。久保山さん、最初に自己紹介をお願いします。

久保山武さん--

こんにちは。久保山です。

私は平成2年のバブル時代に松下電工(現: パナソニック電工)に入社しました。大学3年生のとき、松下幸之助の「人間としての成功」という本を通して松下幸之助の存在を知りました。読み終えた後、この人の会社に入りたいと思い、就職活動をした後、松下電工に入社。私は会社では長年、企画の仕事を担っていましたが、2019年の4月からは福岡で人材育成の人材育成や組織開発の仕事をしています。

松下幸之助経営理念の実践インストラクターという社内の資格を持ち、経営理念などを社員に向けて伝える講師もしています。私としては社外の人にも伝えたくて、WeWorkのメンバーになり、松下幸之助に興味関心のある方々にオンラインセミナーを開催したり、オフィス家具のメーカーのオカムラさんでもセミナーをさせていただいています。ほかにも組織開発の仕事として経営理念を浸透させるワークショップや、森林組合で組織活性化などの仕事も行っています。

中野--

私たちは3人で理念について考え、理念について話してきました。いまだに五里霧中の状態で、およそ半年前からとことん理念について話そうということになりこの「とことん理念会議」を開くことにしました。この会議には毎回ゲストをお招きして、それぞれが思う理念についてお話しいただいています。

今回は企業理念がしっかりされているパナソニックさんに勤務されている久保山さんのお話をお聞きするのを楽しみにしています。

理念は伝えるだけでなく、進化させることも必要。

久保山さん--

私もこの2年半、人材育成の仕事を行うなかで、これまで経営理念に対する意識は薄かったと実感しています。もちろん今は意識を高めて仕事をしているものの、いかに浸透させるか? また仕事に生かしていくことの難しさを体感しています。

実際、松下幸之助も経営理念の大切さを訴えながら亡くなりました。

松下幸之助の映像はたくさん残っていますが、そのほとんどが穏やかな表情で話しています。しかし松下幸之助が「このままでは会社は倒産する」と険しい表情で語っているものがあります。

私がその伝道師として活動することが、会社にとっては大切だと思っています。

もともと経営理念は創業者が作ったものなので、新しく入って来られる方や新入社員にどれだけ腹落ちするのか? 時代も変わっているのでただ伝えるだけではなく、進化させていかなければならないと感じています。

中野--

経営理念も進化していかなければいけないという部分をもう少し詳しくお話しいただけますか?

久保山さん--

私自身は松下幸之助が「こういう会社にしていこうよ」という思いから作った経営理念は、変える必要はないと思っています。ただ時代が変わっていく中で、足りないと感じる部分は補う必要があると思っています。そのためには内部での議論が必要ですが、如何せん約26万人の会社なので、一人ひとりの意見を聞くこともプロジェクトになってくると思います。今、よく企業としての「存在意義」であるパーパスが必要と言われますが、例えばソニーさんや花王さん、エーザイさんなどのように、社員の相違をベースにしながら作り出していくことは必要かもしれません。とはいえ、どちらにしても私はしっかりした経営理念が軸にあった上での話だと思っています。

中野--

パーパスというのはどちらかといえばボトムアップ型ですね。久保山さんがおっしゃるのはボトムアップ型で理念を進化させていくためには、しっかりした経営理念があることが大切だということですね。

久保山さん--

今では松下幸之助を知らずにパナソニックに入社される方もいるので、残念ながら企業理念が薄れているのは事実です。

松下が残した言葉は、自分の行いを振り返るよい機会に。

中野--

私は京阪「西三荘」駅にある松下幸之助歴史館に行ったことがあります。こちらでは社会に向けて松下幸之助について発信されていますが、パナソニックさんの社内にはあのような場所はないのでしょうか。

久保山さん--

社内では当たり前になりすぎて、振り返る機会がないのかもしれませんね。

松下幸之助の経営哲学のなかに「ものをつくる前に人を作る」というのがありますが、これは人材育成の仕事を担う私には仕事のベースとなることです。また「共存共栄」の精神も大切にされていますが、これは得意先、仕入れ先すべてが繁栄するということで、このように言葉は、日常の仕事のなかで自分の行いを振り返るよい機会になっています。

経営理念を日々振り返ることはなくても、これらの言葉はタイミングごとに振り返り、パナソニックのなかで仕事をしているんだなぁと実感します。

中野--

日々のなかで自然と意識するものなんですね。

久保山さん--

実は今、会社の先輩と松下幸之助の事例から、エピソードづくりに取り組んでいます。

先ほどお話しした松下哲学は、高度成長期の時代のものなので、今、現在風にアレンジしようと思っています。

河村--

最近、私が仕事で社史をつくるとき、創業の話はとても面白いのですが、現在の話になると組織の動きだけになり、話としては面白くないとよく感じます。なぜかと考えた時、初期の頃は人も動きも少ないため、一つのことにクローズアップしていることに気がつきました。だからこそ理念に基づいて書いていくことが面白くなるのだろうと、思っています。

久保山さん--

河村さんがおっしゃるように、大きく捉えると浅くなるし、薄くなります。事例は個別であり、小さい事例は説得力があり、面白いですよね。今組織は大きく拡大されていますが、様々な事例を吸い上げていくことが大切ですね。


理念に共感できない者は会社から去って欲しい。

村中--

お話を聞いていて、事例を自分ごととして共感して、アクションを起こしていくのが大切だと感じました。ふと思ったことですが、事例が自分ごとになるタイミングはどんなときですか?

松下幸之助の言葉だからこそ自分ごとにできるのでしょうか。

久保山さん--

私はワークショップなどのなかで感じるのは、多くの方は価値観や、働きがい、さらに生きがいを持っていて、会社の経営理念と共感できないと腹に落ちないと思います。上から与えられたものを仕事に繋げていくのは、動きにつながらない。結局のところ、理念が浸透するというのは上から目線ですよね。

1982年松下幸之助が87歳の時、経営方針発表を幹部に対して発信したスピーチが映像として残っているのですが、珍しく怒っています。この頃、すでに経営から退いていましたが、松下幸之助はパナソニックが大企業病になり、自分が思うような経営ができていないというのが現状で、衰退していると感じていたようです。

「理念は変えずとも新しい物を加えていくのは賛成だが、理念はしっかり守ってほしい、さらに理念に共感できない者は会社から去って欲しい」ということを明確に話しています。

私は採用の時、この言葉を思い出しながら、経営理念に共感できない人は雇うべきではないと思うこともあります。

中野--

なるほど…。今日は松下幸之助さんのリアルなお話が聞けて、感動しました。

やはり、経営の神様ですね。

村中--

私の両親とも松下グループで働いていました。今回、話を聞いていて、松下幸之助の会社からお給料をいただいて僕は育ったと思いました(笑)

中野--

今日は貴重なお時間をいただいて感謝しています。ありがとうございました。



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