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支援のプロセスは共有すべし

福祉サービスには、3つの特徴がある。
①即時性
②無形性
③不可逆性

福祉や教育などは、サービスの生産と消費が同時に行われたり、暮らしの困り感や生きづらさの解消や支援という実態のある製品が存在しなかったり、元と全く同じ状態に戻せなかったりする。
 
こうした特性を持ち合わせている業界にいる認識がないと、クライアントである利用者や家族からの信用をすぐに失ってしまう。とはいえ、ただ認識しておけばOKな話ではなく、キチンと行動をとらないといけない。

その行動とは、「支援のプロセスの共有」だ。
 
僕は、マネージャーとして、スタッフらに「支援のプロセスはいちいち共有しておこう。電話でもメールでも手紙でも写真でも動画でもいい。ケースに併せて、最適な手段を選んで、説明していこう」と伝えている。
 
知らない、分からないを作らない工夫である。人は、知らないことやわからないことがあると、そこを自己のイメージで補完する。このイメージがやっかいなのだ。
 
よくあるケース。
例えば、利用者家族から「うちの子供は、手が荒れやすい。薬をよく塗ってやってほしい」と依頼があったとする。数か月後、手の荒れは改善されていない。この状態を見たご家族は「何やってんだ。治ってないじゃないか。放置されている」と事業所へクレームを入れる。事業所は、後出しジャンケンのように、支援の説明に追われる。こうした支援の体質は、行動を変えないと改善しない。
 
何も「整ったもの」や「完成されたもの」だけを届けるのが、仕事ではなく、現在地から目的地に行くまでの右往左往するプロセスも届ける行動こそ、押さえたい。
 
「手洗いのサポートについては、毎食事、本人に付き添いながら説明しています」
「ハンドタオルの携帯を促しましたが、ポケットに物を入れるのが苦手なようです」
「ハンドクリームを塗布してますが、ヌルヌルする感じが苦手なようで、塗ったあと、トイレで洗い流しているようです」
「日中ではなく、寝る前の塗布を促そうと考えています」

失敗やちょっとした成果も丁寧にパッケージをしつつ、まとめて発送ではなく、小分けにして、適時発送する。トライ&エラーをする人の姿をイメージしてもらう。コトだけを届けるのではなく、ヒトも届ける。
 
利用者家族の抱える見えない、知らないをミニマムにして、リスクを最小化にしていく事業所の配慮は、信用をとりにいくマネジメントでもある。
 



ここで余談。
信用と信頼の話。(※誰かの受け売りの話です)
信用とは、過去の実績から客観的に判断する=クレジットといい、信頼とは、未来に向けて主観的に判断する=ラポールという。
 
信用を貯めて、信頼に転換するイメージ。信用がないと信頼関係なんて形成されない。当たり前の話。

事業所とクライアントとの間で、互いに見聞きした時間や回数を蓄えていけば、任せたい、安心できる気持ちになる。プロセスの共有を無下に扱わず、ひとつずつを重ねていこう。 


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