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料理?それは何を意図して私に求めてるの?

 今まで付き合った人に料理を作ったことは数えるほどしかない。
 そしてそのどれもが、苦い思い出を伴っている。

 大学生の時の彼氏は、彼女に「家庭的」を求める人だった。
 今思えば、男兄弟の中で育ち、女性と大して付き合ってことがない彼の初々しい憧れだったのだろう。結婚するなら本当は専業主婦になってほしいなどと言いながら、とにかく、しきりに手料理を求められた。
 一方の私はとんでもなく天邪鬼な性格であったため、求められれば求められるほど、頑なに料理を作らなかった。

 ただ、相手に対して愛情はあったので、お誕生日には思い立って料理を作った。寿司が好きだった彼のために、実家から寿司桶を借りて、手巻きずしを用意した。(さぞ彼は「思ってた手料理と違う」と思っただろう。)
 寿司桶に放り込んだご飯にすし酢をぶっかけてうちわでパタパタして、ついでに豚汁なんかも作っちゃって、絶対喜んでくれるだろうと思っていた。
 実際彼も「おいしい」「うれしい」と言ってくれたが、私の中の天邪鬼がむくむくと顔を出し、「もっと褒めてくれていいんやで」などと照れ隠しにかわいげのないことを口走っていた。

 問題となったのはその数日後である。
 他愛のないことから大げんかが勃発し、彼は誕生日を振り返り、泣きながらこう告げた。

「俺の誕生日なのに…もっと褒めてとか言って…君の料理のお披露目会みたいやった!!!」

 照れ隠しが大大大裏目に出ていたのである。成人男性が泣いていることは一旦置いておく。
 私は動揺した。いつも読み漁っているTL漫画では、主人公が照れ屋で天邪鬼であればあるほど、相手役の「おもしれー女」的興味をそそり、深みにはまって溺愛されるシナリオなのだが???

 どうやら我々はTL漫画的カップルにはなれなかったらしい。現実を粛々と受け止めつつ、私もそっと泣いた。

 そこからだろうか。私の「彼氏と料理」論が尖り始めたのは。
 もともと私はそれなりにバリバリ働きたいと思っていて、それに沿う進路に進んだ。同級生である彼も同じ境遇であるからには、そのうち結婚したとしてもお互い仕事あるよねと、それぞれ頑張ろうねとなるのが普通ではないか。それがなぜ結婚したら料理は奥さんが作ってねとなるのか。同じように仕事しとるやろがいと、てめえの飯くらいてめえで用意せえよとなるのが筋やないのか?成人男性ちゃうんけ???おん???

 なんだかガラが悪くなってしまったが、まあとにかくそういう思想を抱えたまんま、独身・交際相手なしで30歳に到達した。
 ここに至るまで別の人と付き合ってみたこともある。1cm角の白菜をみじん切りと称して餃子を作ろうとする私を見て、「得意な人がやればいいから…」とみじん切りのやり直しをしてくれた人などもいたが、その人も最終的には「お前んちの米まずいんだからサ〇ウのごはん買っとけよ」などと宣う暴君と化したため即刻別れた。
(うちの米が古かったのが悪いのか、炊飯器が悪いのかは分からんが、サ〇ウのごはんの方が美味しかったのは事実だった。)

 最近では忙しさもあり、ほとんどコンビニか外食でしか食事を取っていない。そんな食生活であることは職場の上司等にも周知の事実だ。
 あるとき、最近の婚活事情を上司と話しているときに聞かれた。
「もし結婚したい相手が見つかって、料理作ってくれって言われたらどうするの?」
「話し合いしますね。話し合い。その料理作ってくれっていう意図は何か聞きます。同じようにフルタイムで仕事をしている私に毎日のご飯を用意しろと言っているのか、それとも私からの愛情表現のひとつとして手料理を経験してみたいということなのか。そもそも、料理以外の家事にどれだけ相手が介入し

もうやめとこう。おわり。

#料理の失敗談

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