カーマン・ラインを越えて行け(the other side)
朝、美術室の扉を開けると大抵先客がいる。くせっ毛で長めの黒髪を規則正しくワックスで整えている彼は、いつも窓際に座ってデッサンしている。美術室は南校舎に位置しているからか、日の光が一日中差し込んでいる。干された画材が白く光り、彼を照らすレフ板になる。色の白い彼の肌が、白いキャンパスよりも映えて見えるのは、他の女子にとってもそうだろうか、それとも私の主観だろうか。私が部屋に入ってきたことにはまったく気づかず、真剣にキャンパスとにらめっこをする横顔に魅せられ、周りの時が一瞬で止ま