一期一会
「ねぇ、将来の夢は何なの?」
「孫に自慢できるような人になることだよ。」
私の予想の斜め上を行くその人の言葉に私は胸を打たれたのを覚えている。
誰もが羨むような成功者になることが必ずしもその人にとってのベストではない。
私はその人と話していると、まるでおじいさんからお話を聞いている未就学児のような気分になる。
公園のベンチに横並びに腰掛け、砂場を眺めながらおじいさんのお話を聞いているような不思議な感覚。
「未来のためにと今を犠牲にしていると言う人がいるでしょう?でも僕は今も楽しむべきだと思うんだ。犠牲にするっていう考え方は間違っていると思う。今は今しかないんだから。」
「言葉遊びをするとね、色々な言葉と出会うことが出来るんだ。全然つながっていないような言葉でも実は繋がっていたりして。」
何故かその人は、この世の全てを知っているかのような、誰も教えてくれない、大人になって私たちが忘れかけている大切なお話をたくさん聞かせてくれた。
そしてふと気づいたときにはもう私のそばにはいなかった。
私は泣いた。
「そっか、もう会えないんだ。」
分かっているのに分からなかった。
そしてまた泣いた。
私が不思議な人と出会って別れた話。
人生は一期一会だ。
ほんの一瞬の出会いが人を変える力を持っているんだということに気づくことが出来た。
次は私の番だね。