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離婚の理由は口内炎

常にテンションが低く、無口な夫がいつも以上に目が死んでいるときは「あぁ、今月もやってきたな」と思う。

なにを隠そう、夫は月イチで口内炎が発生するという地味に最悪な体質の持ち主だ。

子供の頃からそういう体質だとか、口内炎ができやすい歯の形状をしているから仕方がないとか言い張っているが、そんなことあるだろうか。

そんなことは知らずに夫と結婚したわたしは、口内炎という病気がこんなにも新婚生活に被害をもたらすとは思っていなかった。口内炎のせいで何回険悪なムードになったことだろう。

最初こそ「口内炎?可哀そうだね。ビタミン摂りな。」と他人事の思いやりをみせていたのだが、これが毎月となると、話が違ってくる。

まず、口内炎になるとしゃべるのも辛いし、食べ物もおいしく食べられないし、なんてったってキスもできない。キスができなけりゃ、その先だってない。

なんと、味気ない夫婦生活だろう。

わたしが一生懸命作ったご飯を痛みを堪えながら食べ、わたしがふざけてからかったり、ダンスしても、夫は痛みに体力を奪われているから、かまうことなく「はいはい。ごめん。口内炎だから。」とスルーされる、会話も減る。こんなことってあるだろうか。

キスするときだって、ギリギリ唇に触れるか触れない程度だ。中学生?

わたしはただ「ご飯美味しいね」ってふたりで楽しく会話しながら生活したいだけなのに。

病気なんだから夫を全面的に攻めるのは違うとわかっていても、すごく悲しくて、誰も悪くないのに喧嘩になる。

離婚も頭によぎったくらいだ。口内炎離婚。バカらしいけど、こんなことで喧嘩するのも新婚夫婦っぽい。

何はともあれ、これからどう口内炎と向き合い、どう口内炎と夫とわたしの3人?で共存していくか。これがしばらくの課題だ。

夫はありとあらゆる口内炎の薬を試し「実体験!すぐに治る口内炎治療薬ベスト5」みたいな優良口内炎コンテンツ記事を作成し、広告収入でも得ればよい。

(逆にわたしは、「口内炎を治すには妻に優しくするのが一番効果的な3つの理由」という記事を書いて、夫が検索するであろう「口内炎 治す方法」の検索上位にあがるように仕向けるようにしたらどうだろうと本気で考えたりした。)

そして、わたしは口内炎夫の様子を日記にしていつか本にしよう。同じ悩みをかかえる人が案外いて、ベストセラーになるもしれない。一組の夫婦を離婚の道から救うことができるかもしれない。

毎月口内炎になっているのだから、それなりにエピソードはある。記録写真を撮って、リアリティもだそう。

先週、妹から「台湾旅行に行くんだけど、お土産なにがいい?」とメッセージがきたときも、真っ先に「台湾の薬局で買える、口内炎に効くという薬」と答えた。

自分が欲しい台湾紅茶やお香より、夫の口内炎の薬をリクエストするなんて、なんていい妻なんだろう。

妹は「口内炎がさらに悪化しそうな薬だね!面白そうだから買ってくるね!」と快諾してくれた。いい妹だ。

夫のほうも、口内炎のときも元気にふるまおうと、大きな口をあけて、口内炎をわたしに見せつけ状況報告してくれる。別に見たくはないが、わたしを笑わせようとする努力がうかがえてよし。

少しずつ、口内炎を通して夫婦の絆が深まっている気がしないでもない。これから口内炎の本を書くのであれば、むしろ毎月口内炎になってもらわないと困るかもしれない。だんだん、楽しんでる自分がいる。

次回「台湾の口内炎薬について/夫、口内炎を焼く」

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