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NYより、日本の方に伝えたいこと。

おととい自分の身に起こったことを通して思ったこと、ここ数週間思っていることを書き留めます。かなり長くなりますが、飛ばし飛ばしでも良いので読んでシェアしていただけると幸いです。

※私は医療関係者ではありませんので、医学的な見地からの発言はできません。
あくまでも私が経験したことから考えたことや、NY州政府から発表されたことから考察したことを書いているので、その点はご了承ください。


これからどのくらい続くかわからない自宅待機・自粛生活の中で、NYマンハッタンに暮らす私から東京、日本のみなさんに少しでも参考になればと思います。

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前提としてまず簡単に私のことを書きます。私は今年の初めに東京からアメリカのニューヨークに引っ越してきました。こちらに住むアメリカ国籍の方と結婚し、幸せな新婚生活、アメリカでの新生活を過ごしていました。

中国で爆発的に広がったコロナの話はもちろんニュースで毎日見ていました。しかし、1月末2月の時点では、そこまで深刻には捉えていませんでした。まさに対岸の火事といった感じで、余裕で外食もしていたし、「中国やばいね〜」とかなり人ごとでした。多分少し前の東京がまさにこんな感じだったんじゃないかと思います。

多忙なミュージシャンである夫は2月は5日間NYCにいた以外はクルーズ船での演奏、アメリカ国内各所、インドネシアでのフェス(この時すでに日本では感染者が見つかっており成田経由でジャカルタに行った夫はかなり警戒してマスクをしたり外から帰ったらすぐに手洗いうがいシャワーを浴びる、服はすぐ洗濯など対策をしまくっていました)など、いつも通り世界中を飛び回って演奏していました。

3月に入り、3/1にNYで1人目の感染者が確認され、1週間後の3/8には105人、3/17には1374人とあっという間に膨れ上がりました。(1ヶ月経った4/1現在、感染者数83,712人、死者数1,941人)

3月2週目頃から私たちの身の回りでも急激に様子が変わってきました。毎日コロナによる夫の仕事のキャンセルの電話やメール。3月いっぱいのEUツアー、アフリカ遠征、アメリカ国内での仕事は全てキャンセル。NYCのベニューは全て閉鎖。4月のギグもレコーディングも全てキャンセル。5月のニューオリンズでのフェスの仕事も全てキャンセルになりました。

私たちはNYCでレストランやバーが閉鎖になった最後の日3/16にミッドタウンイーストにある知り合いの和食屋さんで食事をして以来、夫の仕事も無くなってしまったし、NYでのコロナ感染者数が激増してきたため自主的に自宅待機することを決めました。(ちなみに、その和食屋さんも残念ながらコロナの影響で3/16にお店を一時閉鎖ではなく閉店することを急遽決めました。)
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現在4/1時点で、自宅待機16日目を迎えています。
外に出たのは近所のスーパーと薬局に食料や生活必需品を買いに行った2度だけです。それ以外は自宅から一歩も出ず、デリバリーも頼まず、夫と私しか接触はありません。現在NYでは、3/22にロックダウン(都市封鎖)をしてから、生活に必要なものを販売している食料品店、薬局や病院・郵便局など以外全て州の命令で閉鎖しています。運動やリフレッシュのために公園は開いていましたが、人が多く集まってしまう公園に関してはやむを得ず閉鎖したとデブラシオNY市長からおととい発表がありました。
今日4/1には、NYCの全ての公園を閉鎖するとクオモNY州知事から発表がありました。

必需品の買い物など以外の不要不急の外出をしたり、ソーシャルディスタンス(6フィート-約1.8m)つまり他人と距離を取らないと、警察に250〜500ドルの罰金を課せられることも決まりました。スーパーや薬局に入店するときは、6フィートごとに引いてある線の上で待ち、1組退店したら1組入店できるという入店制限がありました。

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外出する際はマスク、その上にマフラー、メガネ、帽子で完全防備をして、最短時間で済ませます。帰宅後は、すぐに着ていた服を全て洗濯、コートや帽子、くつなどは除菌スプレーをして干し、何も触れないままシャワーに直行、携帯や財布も除菌シートで拭き、買ってきたものは全て除菌シートで拭きそのあと洗ってから冷蔵庫に入れています。
(ちなみにアメリカではマスクは有効ではない、または病人がするもの、という意識が根強く、中国でコロナ発生当初マスクをしているアジア人が襲われる事件が多発していましたが、最近ではアジア人以外でもマスクを着用している人も街に増えてきました。しかしながら、まだ差別や偏見で嫌な目で見てくる人がいるのも事実です。)


なぜここまでするのか。やり過ぎなくらいするのには理由があります。

私は、子どもの頃から気管支ぜんそくがあります。また、2年前に難病の"オスラー病"と診断され肺血管のカテーテル手術を受けました。運動をすると息切れもあります。中学の頃からパニックになると過呼吸も起こします。現在は元気ですが、10代後半〜20代には自律神経失調症や鬱病も患いました。

毎日アメリカ、イギリス、日本のニュースを見てTwitterやネットニュースを貪るように見て世界中の報道からなにが正しいのか、世界でなにが起こっているのか、NYの家の外の状況はどう変わっていっているのか、日本にいる家族は安全なのか、様々な情報源から自分に必要な情報を取捨選択できるようにしています。


NYでの悲惨で深刻な状況、日本や東京の政府のずさんな対応をニュースで見るたび、心が激しく揺さぶられ、不安と悲しさでいっぱいになります。

夫の仕事仲間のレジェンドと言われるミュージシャンたちも連日コロナのため亡くなったというニュースが入ってきて心が打ちのめされます。


そんな中おととい、長期の自宅待機生活でのストレス、先が見えない不安が爆発し号泣、パニックになり、ぜんそくの発作と軽い過呼吸が併発しました。呼吸が苦しく、ソファーの上でのたうちまわりました。


夫はもともと私にぜんそくがあるのも知っていたし、過呼吸になることも知っていました。オスラー病のことももちろん知っていますし、もしコロナが発症したら重症化する可能性が高いことも理解しています。

発作の起き始め、夫は最初、涙を流して様子がおかしい私を落ち着かせようと普段してくれているようにふざけておどけて笑わせようとしました。
しかし、私の発作は悪化するばかりでした。
夫は何をしたらいいか分からず、「病院に連れて行く!」と言いました。私は空咳と息苦しさの中、「今コロナの患者で溢れてる病院に行ってコロナもらって帰ってきたら私死ぬ!」と必死に伝えました。
そのあと、苦しむ私を見て、夫もパニックになり「外出てくる」と言いました(のちに聞いたら薬局に行ってぜんそくの薬買ってこようとしたそうです)。私は「外行ってコロナもらってくるつもり?殺す気なの?」と必死に訴えました。ふたりでパニック状態でした。

私は精神的な不安からぜんそくの発作が起きたり、パニックで過呼吸になったことが今までに何度もあったので、自分では対処法を知っていました。

ビニール袋を口に当てて呼吸をすれば過呼吸はじきに落ち着きます。気管を広げる薬を飲むか、吸入器を使うとぜんそくはいくぶんか良くなります。口に袋を当てて呼吸を整え少し落ち着いてから、硬直する手や足を必死に動かして倒れ込むように自分の部屋に行き、日本から持ってきていたぜんそくの薬を飲み、横になってしばらくして落ち着きました。そのあと不安を取り除く薬も飲みました。


私が苦しんでいるときに何もできなかった夫を非難しているのではありません。夫はパニックの中、自分にできることを探して必死に対応しようとしてくれました。しかし、分からないのです。自分が同じ病気を持っていない限り対処法を知らないのです。私は自分の持病が分かっていたのに、こうなった時の対処の仕方を夫に伝えていなかった自分を本当に悔やみました。


自宅待機が長くなればなるほど、コロナのこと、仕事のこと、家計のこと、遠く離れた場所に住む家族や友達のことなど心配事は増えるし(特に私のように海外にいて例え発症して亡くなってもすぐに駆け付けられない距離にいる場合)、外に出られず閉じ込められている不安や恐怖で精神的なストレスやダメージが知らず知らず溜まっていきます。きっと誰でもそうだと思います。
小さい子どもや、高齢の方がいる家庭などはさらに気づかいや負担が増えると思います。コロナが広がるのも心配ですが、長引くロックダウン、自粛生活での精神的ダメージもとても心配です。


持病があるひとは、同居する家族や友人に、自分の持病はどういうものなのか、何かあったときにどう対処すれば良いのかを話しておくことをおすすめします。

コロナは持病、特にぜんそくなど気管支が弱い方は重症化しやすいと言われています。

同居する家族がいないというひとで、iPhoneをお持ちの方は、ぜひ緊急時のメディカルIDを登録しておいてください。これがあると街で倒れた時や、緊急時に携帯にロックがかかっていても他人が健康情報を確認することができます。【設定👉ヘルスケア👉メディカルID】から入力することができます。

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緊急時に見る時は、暗証番号入力のロック画面左下の【緊急👉メディカルID】です。
これはコロナ関係なく、どんな場合でも緊急時に有効だと思うので、iPhoneを使ってる方で未入力の方々には教えてあげて欲しいなと思います。


ウイルスの脅威が終息したとしても、そののちには世界的な大不況、仕事や家を失った人が街に溢れ、治安の悪化、行き場のなくなった人たちの自殺など、負の連鎖が続くことが予想されます。

もうすでにたくさんの個人店が潰れていってるのをNYCでも目の当たりにしていますし、普段はほとんどサイレンの聞こえない静かな住宅エリアに住んでいますが、毎晩断続的にサイレンの音が聞こえ、ヘリコプターの音にビクビクする日々を過ごしています。調査をうたって家に押し入る強盗も発生していると聞きました。

日本や東京は"自粛"という言葉を使って、各個人の良心や判断に責任を委ねているように感じます。それでは個人個人で意識のズレが出るのは当たり前ですし、生活するために出勤できるならするのは当然です。でもそれでは感染拡大はいつまで経っても止められないと思います。ウイルスは人を選びません。年齢も国籍も関係ありません。


(また、多くの人は理解していると思いますが、今回の"自粛"は震災後にあった"自粛"とは全くもって意味がちがいます。これは「こんな時だからこそ、楽しもう!全力で踊らせます!」と高らかにクラブイベントを宣伝していた呑気な知人に向けての言葉です。)


4月に入り、じき東京の感染者は、NYで起きたように一気に爆発的に増えると予想されます(隠蔽がない限り)。東京から地方に帰った人たちから、地方でも爆発的に広がるかもしれません。これはまさに先月イタリアで起こったことです。すぐに病院はパンクしてしまいます。ベッドも医師や看護師も足りなくなります。そうなると死者が一気に増え、まさに地獄絵図です。

NYはロックダウンし自宅待機を徹底した後にも、毎日感染者・死者数が増加しています。それはこのウイルスが昨日今日感染してすぐに発症するものではないからです。

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4/1現在、NYでの新型コロナウイルスの感染者数及び死者数は以下のとおりです。(( )内は前日の数)
○ニューヨーク州:感染者数83,712名(75,795名),死者数1,941名(1,550名)
(うちニューヨーク市(マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、スタテン島):感染者数44,915名(43,139名),死者数1,139名(932名))

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2週間〜1ヶ月前に電車に乗ったり、会社に行ったり、パーティーをしたり、ごく普通の生活をしていた人たちが感染したものが、今になって出てきているのだと思います。発症に時差があるのは、目に見えないウイルスと戦う上でなかなか実感を得られないため、"自分は大丈夫"と余裕を持たせてしまう一因ではないでしょうか。


実際に症状がないと難しいことですが、「自分も無症状無自覚の感染者である可能性がある」とひとりひとりが自覚して、"他人にばら撒かない行動"をすることが求められています。

もし東京がロックダウンしたら、今NYで私たちがしているような長期の自宅生活が強いられます。

外に出られないストレス、直接的なウイルスの脅威、経済的な不安、先の見えない恐怖、本当に心が病みます。どうかみなさん、自分、同居する家族、友人、遠く離れた家族の心と身体を大切にしてください。


私の夫は毎日私を笑わせてくれます。できるだけ笑顔で過ごせるように、とっても気遣ってくれます。それでもパニックになりました。知らないうちにストレスはたまってるんです。夫もきっとそうだと思います。毎日お互いに「ありがとう」と感謝の気持ちを伝え合うこと、「あいしてるよ」と愛情を伝え合うことを大事にして1日1日を過ごしています。
そして家族と協力して、大切な情報は事が起こる前にシェアしておいてください。

詳しい事はわかりませんが、物流はおそらく最後の最後まで止まらないと思います。
スーパーで必死に買いだめする必要もないと思います。NYの私の家の周りのスーパーでも3月2週目くらいにパスタやパスタソース、日持ちする食料品、トイレットペーパーなどの買い占めが起こり、一時的に棚が空っぽになりました。そこから2週間経った今、少し品薄のものはあれどほとんど元どおりの品揃えです。必要な分だけ必要な人に行き渡るようにすれば焦る必要はないと思います。物流を止めないために危険な状況の中働き続けてくださってる方々には、感謝の気持ちが尽きません。


話があちこち飛び飛びになってしまいましたが、私は決してアメリカに住んでるから日本のことは関係ないなんて思っていません。日本には大切な家族や友達がいるからです。上から目線で言ってるつもりもありません。NYで今起きていることをシェアすることで、東京でできるだけ感染拡大を止めて欲しいから伝えます。
「アメリカに住んでるならアメリカの心配だけしとけ」などとぶつけてくる人もいますが、アメリカで結婚しても私は日本人です。遠く離れていても自分の大切な国のことを心配するのは当たり前のことだと思います。

不思議な新婚生活になってしまいました。
皮肉なことに、3月中、夫は2週間海外での仕事が入っていたので本来なら月の半分はNYCの慣れない土地でひとりぐらしの予定でしたが、丸一日中そして毎日夫と過ごす事ができています。
こんな新婚生活は全く予想していませんでした。「4月になったらDCに桜見に行こう〜」とか「あったかくなったらNYの観光名所まわってウェディングフォト撮ろ〜」とか「5月にニューオーリンズに旅行いこ〜」とか「新婚旅行いこ〜」とか楽しい計画は全て消えました。でも今はふたりで家にいて耐えるしかないのです。それができるだけ早くこのめちゃくちゃな毎日を止める近道だと思っています。


辛い毎日の中でも、少しでもポジティブに。
心の健康を保つためにも、前向きに物事を捉えられるよう自分でも努力していきます。


大切な人の命を守るため、大切な人のそのまた大切な人の命を守るため、今はとにかく家にいてください。家から出られなくなるのはとっても辛くストレスですが、一緒に乗り越えましょう。

今世界中が戦っている相手は"人"ではありません。全容の見えない人殺しウイルスです。アメリカも日本もいる場所は関係ないです。世界中の人が戦っています。日本も例外ではありません。みんなで協力し合って少しでも感染拡大を抑えられますように。そして、一刻も早くワクチンや薬が見つかって、世界中に平穏な日々が戻りますように。


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