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ひまわりのワンピースを着た女

大学の時に喫茶店のバイトしてました。カフェではありません。喫茶店。
あれ、この話書いたことあるかな。ま、いいか。
そこの店長が、私は専務さんと呼んでましたけど
歳はあの頃で60歳くらいだったのかな、お上品なおばさまでした。トレードマークはひまわり。ひまわり一本が胸元から膝くらいまで描いてある紺のワンピースをよく着てました。
コーヒーを一つ一つサイフォンで入れるお店です。コーヒーはおいしいんだけど専務さん、からきし料理下手でよく喫茶店できるなと大学生ながら思ってました。
ピザトーストが。普通の食パンにスライスチーズ乗せて小さく刻んだベーコン散らすだけ。
向かいの喫茶店「フルフル」のピーマンや玉ねぎののったピザトーストのなんとおいしそうなことか。私だったら絶対フルフルに行く!
そんなわけでお店は暇でいつも掃除ばかりしてました。もう磨くところがないくらいピカピカ。
お客様はそれでも常連さんがいて近所の郵便局の人とかドラえもんに似たおじさまとか独身と見られる三十路の女性3人組とか隣のお店の口紅ベッタリつけてくるこわい店長さんとか。

暇なので専務さんはいつも柱の影に隠れてタバコをぷかーっとふかしながら私と雑談。
「リンちゃん、三十路の女には気をつけなさいね」


なんでか今でもそれだけは鮮やかに蘇るシーンです。
三十路を過ぎた今となってはかなり身に染みるお言葉です。

専務さんはもう亡くなられたと噂で聞いてなぜかちょっと言葉にして残しておきたい気分になりました。

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