リヒテンシュタイン 〜少しでも残した足跡〜(コンチキツアー1−13)
ずっと参加したかった、英語を使った国際ツアー「コンチキツアー」での思い出です。
旅にまつわる音楽を聞きながら、記事をお楽しみ下さい♪
<訪問国16 リヒテンシュタイン>
現役のお城がある国
コンチキツアーでスイスの次に訪れた国は、リヒテンシュタインだった。
「ほんの少しの滞在時間で、首都・ファドーツをどうやって観光するか?」
バスの中は、朝早くから盛り上がっていた。
「今も公爵一家が暮らしているファドーツ城は、必須だね」
「ホラーコメディーのモデルになっていて、しかも現役っていうのがすごい」
「スイスと違って、リヒテンシュタインはハイキングできる天気だといいなぁ」
スイスからリヒテンシュタインには、シェンゲン内でいとも簡単に入国できた。
「みんな!首都ファドーツに……到着だよ」
「……!」
ツアーガイドのルーカスが、少し元気なくアナウンスした理由が分かった。
バスの外は、なんと暴風雨だった。
折り畳み傘が壊れそうな中
「くれぐれも暴風雨に気をつけて、さっき伝えた時間に戻って来てほしい!雨宿りしたい場合は、さっき伝えたカフェがお勧めだよ」
ルーカスにたくされ、全員バスから降りた途端、折り畳み傘は暴風雨でひっくり返った。
「日本の折り畳み傘、意外に弱いなぁ。この傘に入って!」
ツアーメイト達に助けられながら、私はなんとか、暴風雨の中に鬱蒼とそびえ立つファドーツ城も教えてもらえた。
「ほら、あそこに建ってるよ!」
「あった!天気が悪くて、ますますホラー映画に映えそうだね」
ますます冷たく激しい風が吹き、もはや立っていられなくなった私達は、可愛らしいメイン広場を横目に、観光案内所の「リヒテンシュタンセンター」へ逃げ込んだ。
そこでは、晴れの日のメイン広場や、行きたかったファドーツ城の写真をたくさん見ることができ、ますます悔しさが募った。
この状況でもやれること
「これじゃ、何も出来ないなぁ……」
「せめて、みんなでここに来たこと位、残したいね」
「確かに……。そうだ、入国スタンプ押してもらおう」
「え?でもリヒテンシュタインってシェンゲンだから、スタンプは押してもらえないんじゃない?」
「普通はそうだけど、ここは3ユーロか3フランさえ払ったら、押してもらえるみたいだよ!」
ちょうどフランからユーロに両替し戻す時だったツアーメイトもまだいて、
「最後のフランを、リヒテンシュタインで使える」
と、喜んでいた。
3ユーロを払って
観光局での入国スタンプは、なんともリラックスした雰囲気の中押され、何の質問もされないのが逆に新鮮だった。
「有料だと、こんなにすんなり押してもらえるんだ」
「しかも、これ見て。すごく可愛くない?」
「3ユーロの価値あり!」
「うーん……僕ら用は、もっとイカつくしてほしかったよ!」
あなたがもし可愛いスタンプがお好きなら、リヒテンシュタインの入国記念スタンプは強くお勧めしたい。
刻々と迫る時間の中で
観光案内所は隅から隅まで見渡せたものの、荒れ狂う外の天気は、変わることがなかった。
「この土砂ぶりと、少ない残り時間で出来ることって何だろう?」
「……雨宿り?」
傘をさしてもびしょ濡れになる大雨の中を走り、ガイドのルーカスが紹介してくれていたカフェになんとか到着した。
少し走っただけで濡れた服をふきながら注文したのは、ホットココアだった。
太陽が姿を消してしまったスイスから、ホットココアは、なぜかカフェの常連になっていた。
「はぁぁ。甘くて救われる……!」
「この調子じゃ、私が行きたかった国会議事堂も、あなた達が行きたがってた教会も近いのに、全て、たどり着くだけでも至難の技ね」
「どしゃ降りの時は、どうしようもないよ。リベンジできる時間がせめてあればいいのにな」
「この国も同窓会で、リベンジしよう!」
「いいね、それ。スイスで大金を使い果たした後、今回と同じルートでね!」
一番滞在時間が短い国
日本でいうピーク時の台風のような暴風雨が、夏の北〜西ヨーロッパでは時折登場する。
この暴風雨がリヒテンシュタイン滞在と重なったのは、不運だった。
刻々と集合時間は迫り、初のリヒテンシュタインは、今までの旅の中で一番滞在時間が短い国になり、同時に、カフェとスタンプ以外、何もできなかった国になった。
そんな中、ツアーメイトと意地でも押したスタンプと、びしょ濡れの状態で飲んだホットココアのおかげで、今も私はリヒテンシュタインのことを思い出せ、ファドーツに足跡位は残せたのかな、と思う。
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