まとまりのいい花束よりも

ただひたすらわからなくて、わかりたくもない、そんな気持ちで手にした花束はいやに色鮮やかで美しかった。人に花を贈るとき、大抵は青のカーネーションを入れる。花言葉は、「永遠の幸福。」時間って、肌触りのないテーマ。

約束のできる人間に生まれたかった。瞬間風速を感じる産毛だけはやたらと敏感で、でも本当の意味での繊細さは、きっとどこかに抜け落ちてしまった。色素が薄いから無くなったことにすら気づかず、歩いていたら失ったことを気づいた3年後にはもうステージ4で、手遅れ同然と気付けばもうなんでも良くなった。夜道を白線に沿って石ころを蹴りながら、トボトボと靴紐のゆるんだつま先を見つめる。新調したはずの靴なのに、石灰みたいな白い粉がついていて、赤い光の灯ったオジちゃんオーナーがよくしゃべる木造イタリアンの前で、石が車道に元気よく飛び出した。
秒針はそのまま流れていた。

花を贈った友だちから、今夜のワタシの狭い地球上でいちばん幸せな話をきいて、ホッキョクグマが暖炉をみつけたときのきもちになった。暖炉をよろこべる地球だといいね。違和感がほしい。

この記事が参加している募集

今日の振り返り

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?