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中学生に「働くこと」について伝えるために

英語の授業から外れますが、池上彰先生の『私たちはどう働くべきか』という本を読んだのでそれについて書きます。2019年11月に立川市立立川第五中学校で行われた公開授業を、本にまとめたものです。

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私は家族の仕事の都合で引越しが多く、長期的なキャリアを考えにくい立場です。年度途中になれば仕事がない場合もありますし、そもそも保育園や学童に子供を預けられないこともあります。悩ましい問題です。

でも、いろんな土地で「働く」ことを経験したおかげで、生徒には他では聞けない話をすることができています。学校や地域によって、さまざまな特色がありますし、違う土地にいる中学生の話を聞かせると面白がってくれます。生徒の祖父母がいたり、実は生まれはそこなんだという生徒と会うと、話は盛り上がりますね。先生は朝から晩まで学校にいると思っていますから、私は非常勤で何時までしかいないんだよ、と伝えると、とたんに私が先生からただのママに見えるようで、子育てがんばってね、なんて言われることもあります。

さて、池上さんのこの本は、将来どんな働き方をすればいいのか、悩み多き若者たちにむけたメッセージがたくさん書かれています。ですが1番面白いのは、やはり池上さんの体験談です。簡単ですが、3つにまとめてみました

①池上さん流の「希望がかなう」方法
②人生設計がガラガラ崩れた?
③自分の価値を高めるための我慢とは

①池上さん流の「希望がかなう」方法

それは、みんなが希望しないところを希望すること、です。NHKに入社された後の異動希望についてのエピソードです。みんなが都会に行きたがるところを、小さな町を希望して、それがかなう。みんなが放送局を希望するところを、県庁所在地から離れた通信部を希望して、それがかなう。そんなことを繰り返していると、最終的には自分がやりたいことをたくさん達成できていた、ということです。中学生にも分かりやすく、面白いエピソードだと思います。

②人生設計がガラガラくずれた?

これは意外なエピソードでした。池上さんはNHKのキャリアのなかで、解説委員という、いつまでも現場に出て、自分でリポートできる仕事につきたかったそうです。でも、池上さんは「こどもニュース」で何でも解説していたので、「お前は専門性がないから解説委員になれない」と、上司の方に言われたそうです。しばらく落ち込んだとあり、驚きました。そこから、ニュースを基礎からわかりやすく解説するという「隙間産業」に自分の専門性を見つけ、フリーランスとなられたそうです。こういうことも、中学生に伝えられたらいいですよね。

③自分の価値を高めるための我慢とは

先生が「我慢」というとどうしても教育的になってしまいますが、我慢の大切さを伝えることは必要ですね。池上さんは、フリーランスとして、自分をブランディングする必要がありました。さらに、ジャーナリストとして、信頼というのはとても大切なものです。ですから、コマーシャルに出ない、金融取引をしない、政治家の後援会で講演しない、など、自分が維持すべきモラルを決めて行動されているようです。なるほど、と思います。

たとえお金や条件がよくても、自分が本当にやりたいことをするために、そのほかのことには手を出さないで我慢することも時には必要なのです。

池上彰『私たちはどう働くべきか』

ある話題において専門用語を使い説明することよりも、専門的な知識がない人に、分かりやすいことばで、説明することのほうが難しいですし、面倒くさいこと、時間がかかることのように思います。そこに、自分の専門性を見出し、会社を離れて自分で取材を続けながら、仕事をしておられる池上さんのお話は、とても印象的でした。

私はジャーナリストではありませんが、自分なりに調べながら読んでくださる方を意識して記事を書く身として、その姿勢を学びました。本の中では、会社(先生の場合は学校になるかもしれません)に頼らない人生設計にも触れていますし、それについて考えると、私は楽しい気持ちになります。

中学校では職業調べなど、働くことについて考える機会があると思います。でも、そういう整った機会だけでなく、時折話すのも良いかもしれません。先生方から働くことについて話す際に、こちらの本が参考になれば幸いです。

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