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【子育てエッセイ】夏の雲とネコジャラシ

夏の雲は、刻々と表情を変える。
まるで2歳の娘のご機嫌とおんなじだ。
ほんの数分前までニコニコしていたと思ったら、急に大泣きしたりする。

予測不能なその変化に、私はおろおろするばかり。

娘の成長は凄まじい勢いですすんでいる。
昨日までできなかったことが、今日できるようになる。
その喜びはとても大きいが、同時に痛みも伴う。

夏の嵐が過ぎ去った後の静けさの中に感じられる、湿った空気のように。
娘の成長は、私のこころに複雑な感情を生み出す。

空にかかった虹がきえていくように、
娘が赤ちゃんだった頃の記憶が、
どんどん遠ざかっていくような気がしてならない。

忘れたくないエピソードは綴っておこう。

娘の最近のお気に入りは、ネコジャラシ。
今朝もネコジャラシをみつけると、
「とって~」と叫ぶ娘。

電車を1本逃しつつも、何とか保育園へ。
抱っこをせがむ娘を置いて、出勤した。

仕事をする間、少し大人の会話に満たされて。
考える隙もないほど忙しい方がいい。
ふと窓の外の空を見上げる。
刻々と表情を変える夏の雲は、まるで娘の成長を見ているようだ。

頭の中で、今日の夕飯を考えつつ娘のお迎えに。
お土産に、散歩の公園でとったという新たなネコジャラシを頂いて。

保育園からの帰り道、娘はキョロキョロしながら言った。
「ネコジャラシないね~」
手にはネコジャラシを3本も握っている。
そういえば、いつの間に「ネコジャラシ」という言葉を覚えたのだろう。
昨日まで猫を「にゃーにゃー」と言っていた気がするのに。

「こんばんはだよー」
まだ明るい空に、白く浮かんだ月をみて娘が言う。
「本当だ。もうおつきさまでてるねぇ」

『おつきさま こんばんは』という絵本を読んだからか、娘は月をみつけると「こんばんは」と挨拶するようになった。

子どもの頃、空を眺めるのが好きだったのを思い出す。
明るいうちから出ている月、不思議だったよなぁ。
どうして、月が自分についてくるのかも、子どもの頃は、真剣に悩んだものだ。
そんな私に、母がおつきさまの本をやっぱり読んでくれたっけ。

娘との会話が成り立ってきた喜びを感じつつ、抱っこではなく歩く娘の姿にさびしさを憶えた。

「あぶないから、ててはつないでね」

夕焼け空の下、娘は私の手をぎゅっと握りしめ、空を見上げた。
ピンク色に染まった綿菓子のような雲をみつけ、
「うさぎさん!」と娘がはしゃいでいる。
娘の成長を誇らしく感じつつも、やはり少しのさびしさが拭えない。

これからは、もっと一緒に空を眺めていこうね。
娘との日々は、夏の雲のように変化に富んでいて、思いもしない瞬間が詰まっている。
いつまで一緒に見れるのかなぁ、
なんてセンチメンタルすぎるだろうか。

喜木 拝





あとがき

どうも、図書館で働く2歳児のママ、喜木凛(ききりん)です。

#シロクマ文芸部  さんのお題で書いてみました。
「夏の雲」から始まる小説・詩歌・エッセイを自由に書く企画です。

いつもは、ですます調が多いのですが、何となく文体を変えてみました。
伝わるようなエッセイにするのは難しいですねぇ。
情景が浮かんでいると嬉しいです。

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それでは、また^^




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