一生懸命

今日の気分はちょっぴりブルー。
調子の良い日々だったのに、、。
でもこうやって文章を書く。

私の働くパン屋の屋根のその下に、数日前からつばめが巣作りを始めている。
レジから見えるその光景に、私はほっこりとしたあたたかな気にさせてもらっていた。
しかし、どうやら巣作りは進んでいないようだ。

2週間ほど前からパン屋の周りをつばめが飛び交うようになった。
少しやせた思ったより小さなそのつばめは、来る日も来る日も飛び回って、ようやくこのパン屋の屋根の下に巣を作ることを決めたようだった。

二匹のつがいのそのつばめたちは、交通量の多いちょっと大きな交差点を低く低くとんでいて、私は、”いつか車や人にあたってしまうんじゃないか”と気が気ではなかった。
実際に、巣作りの下見にこのパン屋の周りを飛んでいた時には、パン屋の透明な窓ガラスに2,3度ぶつかり、私はその光景に少し胸を痛めたばかりだった。

つばめたちは今日も朝から屋根の下めがけて飛んできて、壁際に近寄っている。けれどつかまったり羽を休めることのできるような場所はないため、少しするとまた交差点のほうへと元気よく飛び出していく。
また一方のつばめが代わりに飛んできて、同じように壁に掴まろうとするように空中で羽を大きく動かしていた。
その小さなくちばしには体の半分以上の長さの細い枝のようなものが見えた。
”なんにもないところに枝を持ってきても、巣は作れないんだよ”と
私はこころの中で、一生懸命巣作りをするつばめたちに伝えた。

屋根の下には、小さな枝や、大小さまざまな緑や薄い灰色のごみのようなものが落ちていて、どれくらいこのつばめたちが一生懸命に巣作りをしているのかが、よくわかった。

夕方近く、少しずつ陽が落ちて、暑さも和らいできたとき、まだつばめたちは飛んでいた。
よく見ると、朝にはなにもなかった壁に、小さな砂利の含まれた土に水をかけて少し乾いたようなもの、が点々と壁についていた。さらに見続けているとつばめたちは、壁におしりをすりつけたり、また枝を持ってきたり、何も持たずに帰って来たりを何度も何度も繰り返していた。

つばめたちは、巣を作るために一生懸命だった。

私は、そんなつばめたちを見ていて何とも言えない気持ちになった。

ただ、がんばれ、がんばれ、と心の中で伝え続けて、このつばめたちの頑張りを見させてもらっている自分に、何かできることはないだろうかと考えていた。
手を貸すことや巣に代わるものを用意してあげることはできるかもしれない。
そうしたほうが自分は気持ちがちょっぴりよくなるのかな、なんて思った。
だけど、それをしたらつばめたちはどんな気持ちになるだろう。
もし、つばめたちが毎年巣作りに挑戦しては失敗を繰り返していて、今年こそは、と決心して取り組んでいるのだとしたら。
もし、つばめたちがこの場所にゆかりがあって、どうしてもこの場所で巣作りをしたいと頑張っているのだとしたら。
つがいで話し合ってけんかをしながら、やっと決めた場所だとしたら。

そんなことを考え始めたら、今日の私には何をしてあげられるか の
答えらしい答えは見つかりそうになかった。

つばめたちの有志を一生懸命目に焼き付けたい。

一生懸命…

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