sunray

 自身の前世について考えたとき、とある光景が浮かぶ。彼女はそこにいて、窓の外に目を向けている。空気感、刻一刻と進んでいく陽光、石畳の硬さと暖かさ、瞳。彼女こそが前のわたしだと思っていた。ところが、その光景が浮かぶということは、きっと同じ部屋で彼女を見ていた誰かなのだろう。家族か、恋人か、その他か。わからないが、前のわたしが彼女を愛していたことはわかる。次の自分になっても覚えていたいと目に焼き付けた光景、またはその生で最も印象的な光景があれならば、今のわたしがそれを見ることができるのは、きっと幸せなことなのだろう。

 いつでも思い出せるし、忘れることがない。なぜならこれは夢ではないから。忘れないようにとどれほど思い返しても、夢は薄れゆくものである。だから、彼女はそこにいた。そう確信するのである。


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