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【詩】才

音に心をのせてメロディーをならす
鍵盤の上を滑るように動く両手の所作が美しい
高窓から月明かりが射す
白い三日月が投げかける優しくも儚い光
メロディーはそれにふさわしいものへと移り変わる

いつまでも聴いていたかった
いつまでも見ていたかった
わたしのためだけのコンサート
月明かりに照らされた銀舞台

彼はその指先でその無邪気な心で音と戯れる
開かれた高窓からその世界が広がる
わたしはそこで気がつく
聴衆はわたしだけではないことを
聴衆はこの星のすべてのものだった

星が彼の演奏を望んでいる
彼は世界をならし世界は彼に聴き入る
彼の才は世界に望まれている

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