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「スタンス」を学ぼう (データサイエンティストが学ぶビジネス その1)

こんにちは。普段IT系の会社でデータ分析やシステムの開発・運用などをしているrilmayerです。

データ解析職として新卒で会社に入社してから3年目に突入したので、会社での学びを自分なりにまとめて共有していこうと思います。
ここでは、自分が新卒の時に知っておきたかったことや、振り返ると重要だったなぁと思うことをテーマとしていくつかピックアップして掘り下げていこうと思います。
と言うことで、初回のテーマは「スタンスを学ぼう」です。

「スタンス」と「スキル」

「スタンス」という言葉を聞いたことのある人はいるでしょうか。
一般的には「仕事に取り組む姿勢」や「仕事に対峙する自身の立ち位置」などの意味で使われています。
会社だと「あの人のスタンスは見習いたいね。」や「彼はスタンスがいまいち。」などの使われ方をします。

似た言葉として「スキル」と言うものがありますが、こちらは仕事で用いる特定の「能力」などをさして使われます。
スタンスとスキルの違いについての詳細は以下の記事が参考になります。

よく「スキルを身につけよう!」と言う話は聞きますが、「スタンスを身につけよう!」と言う話はなかなか聞きません。
なぜなら、スタンスを身につけるのはかなり難しく、そもそもスタンスと言うものが曖昧で定義しにくいからです。

そして注意したいのが、スキルの有無は直近の仕事に直結しますが、自身のスタンスは長期的なキャリアの成否に大きく関わると言うことです。
スキルは「どんな仕事ができるか」を示しますが、スタンスは「どのように仕事をするか」を示します。つまりスタンスによって仕事の成果や、周りの人の評価がかなり変わってくるということになります。

企業文化としてのスタンス

この記事で対象とする「スタンス」をより明確にしていきます。
一般的に想像しやすい「前向き」だとか「やる気がある」などといった「スタンス」とは別に、様々な会社で長年培われ重要視されている「企業文化」、「行動指針」、「バリュー」などと言う形で明文化されている(されていない場合もある)「スタンス」があります。この記事では前者を「仕事への取り組み姿勢」、後者を「スタンス」とします。
新卒として身につけるべきは後者のスタンスで、このスタンスを学び身につけることが新卒で企業に入る大きな「うまみ」の一つです。

この記事では、上記の立場に立って「どのようなスタンスが良いとされるのか」「そうしたスタンスを身につけるためにはどうすれば良いか」をお話したいと思います。

自分のスタンスには自覚的か?

実は、自分のスタンスを自覚したり、他人のスタンスを理解したりするのは結構難しいのです。
スキルであれば「私は司書資格を持っている」、「あの人はプログラミングができる」、「彼女はマーケティングスキルがある」など明文化しやすいですが、スタンスの場合だとどうなるのでしょうか?

では、そもそも世の中にどのような「スタンス」が存在しているかを知るところから始めましょう。

リクルートグループ人事で重要視される4つのスタンス

詳細は上記の記事に詳しいのですが、リクルートグループでは従業員に求める「6つのスキル・4つのスタンス」と呼ばれる明文化された行動指針のようなものがあります。以下に、4つのスタンスを示します。

・圧倒的な当事者意識
・考え抜く・やり抜く姿勢
・広く・深く学び続ける姿勢
・チームとしての協働を追求する姿勢

この中でも特に重要視されているのが、「圧倒的な当事者意識」です。
そして、上記の記事によると以下のようにして圧倒的な当事者意識を育てていると言われています。

入社してもすぐに、新卒・中途を問わず「あなたはどうしたいの?」「この仕事をどうしたいと思っているの?」とたずねます。一般的には、「それは上司が考えること」と思われるかも知れませんが、リクルートでは意思のある人を尊重して、とにかくやらせてみる機会を提供します。そういう当事者意識を持った人を、できるだけ応援しているのです。

この「圧倒的当事者意識」については「自身がどうしたいか」を周りが問い続ける、そして自分自身に問い続けることによって醸成されていきます。

圧倒的当事者意識とエンジニアの仕事

自分自身も社会人生活を過ごしてきて、この「圧倒的当事者意識」が非常に重要だと思うシーンが多くありました。
以下は自分がとあるシステム開発に関わった時の話です(多少事実と異なりますが)。
このプロジェクトではすでに運用されている検索システムの上に、新しく機械学習のアプローチで検索の精度を向上させるシステムを接続することを目指していました。
ところがローンチ直前になって、事業的な問題によってシステムがリリースできないことが発覚したのです。通常、システム開発者として関わっているのであれば、そこでストップ、事業側の解決を待つのかと思います。
しかし、関わっていたエンジニアたちは「このシステムをリリースすることが事業として価値が出るし、会社の利益のためにも必ずリリースしなければならない」と言うスタンスで取り組んでいたため、自身たちで事業的なトラブルを解決するために動き予定通りリリースされることになりました。

ここで重要なのは、エンジニアたちが「どの立場で」「何を見据えて」システム開発を行なっていたかと言うことです。
一方、良い悪いは関係なく「私たちはシステムのエキスパートだから、事業的な課題の解決は行わない」と言うスタンスもあり得るかと思います。
こうした仕事に対峙する姿勢は、日頃の上司とのやり取りや、自身の内省によって醸成されていくのだと思います。

その他の会社のスタンス

その他、特徴的な企業の「スタンス」をご紹介します。

■楽天
楽天では以下「成功のコンセプト」が、ポスターとして社内に貼られ重視されていると言います。

・常に改善、常に前進
・Professionalismの徹底
・仮説→実行→検証→仕組化
・顧客満足の最大化
・スピード!!スピード!!スピード!!

こうしたコンセプトの背景に関しては以下の記事で触れられています。

■DeNA
DeNA社は「DeNA Quality」として以下のように5つの行動指針を掲げています。

・「こと」に向かう
・全力コミット
・2ランクアップ
・透明性
・発言責任

また、以下の記事ではどのように上記の企業文化を培っているかなどが紹介されているため参考になります。

■TOYOTA
TOYOTAでは「トヨタウェイ」として以下のような2本の柱と5つのキーワードからなる行動指針を掲げています。

トヨタウェイは「知恵と改善」「人間性尊重」の2本の柱で成り立っています。現状に満足せず、高い価値観を追求し、そのために知恵を絞りつづけること、あらゆるステークホルダーを尊重し、従業員の成長と会社の成果を結びつけること、この2つを常に念頭において行動することが、すべてのトヨタで働くものに求められています。また、この2つの柱は、『チャレンジ』『改善』『現地現物』『尊重』『チームワーク』の5つのキーワードに分けられます。

これらの背景や、育成に関する内容は以下の記事で触れられています。

スタンスを身につけよう

ここまで見てきたように、企業ごとに重視するスタンスに違いはあれど、どのようなスタンスが良いとされ、そしてそれらをどのように身につけていくのかを見てきました。

これらのスタンスを見て「なるほど」と思っただけではダメで、こうしたスタンスを「何度も問われる環境に身を投じること」や「自身で仕事と向き合う中で常に意識する」といった状況になって初めてスタンスを身につけることができます。

また、先にも述べましたが、スタンスを身につけるのはキャリアの後半になるほど難しくなります。なので、出来るだけ早いうちからどのようなスタンスでありたいか、どのようにそれを伸ばしていくかを考えていくことは重要です。
スタンスについてはキャリアの前半の方が身につけやすく、かつ後半への影響が大きいです。ですから、早いうちに身につけるように意識してみてはいかがでしょうか。

上の図は、スキルとスタンスが直近〜長期のキャリアにどう関わってくるか、またスキルとスタンスの習得時期について示したものです。

今すぐ始めよう!

ここでは、このテーマを深掘るためにすぐにできるアクションプランを書いています。

1. 自分が仕事と対峙する時のスタンスについて言語化してみましょう。仕事に対してどんな立場で仕事をしているでしょうか?当事者として取り組んでいますか?一歩引いた立ち位置から客観的に取り組んでいますか?それとも何者でもない状態で仕事に取り組んでいますか?

2. メンターや先輩を捕まえて、自身のスタンスについてどのように見えているか聞いてみましょう。できれば、今の会社で理想的とされるスタンスについて聞き、そことギャップがあればどのようなところにギャップがあるかを教えてもらいましょう。普段、自分が思っているスタンスと外から見えるスタンスには往往にして差分があります。そうした差分について把握しておきましょう。

3. 現状のスタンスと目指したいスタンスに差分があるとすれば、それを埋めるためにどのようなことができるかを書き出してアクションプランに落としてみましょう。もし、より良いスタンスがあるのであれば、そうしたスタンスも取り入れる努力をしてみましょう。もしくは、自分の考え方とは合わないスタンスについては取り入れないという判断も行いましょう。自覚的に選択をすることが重要です。

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