見出し画像

(有)神田葡萄園 ~115年の歴史と6代目としての挑戦~

 神田葡萄園は明治38年(1905)に創業し、葡萄の栽培からジュースやワインなどへの加工を行っている会社です。今回の合宿では6代目の代表取締役の熊谷晃弘さんにお話を伺いました。

 2011年3月11日の東日本大震災では、津波の被害に遭い、直売所は天井近くまで、工場は1Mほど浸水してしまいました。そのため工場内の機械はほとんどさびてしまい、がれきの撤去や修理に3か月かかりました。
 そんな中でも営業を再開しようと決心したのは、「震災被害に遭ったからと言って営業をあきらめてしまうのはもったいない」という経営がうまくいかない時期を経験した熊谷晃弘さんのお父様の気持ちがあったからだそうです。


マスカットサイダー

 様々な加工商品を製造していますが、その中の1つが「マスカットサイダー」です。売り上げの半分以上を占めている看板商品です。
 昭和45年に4代目が開発した商品で、マスカットサイダーの特徴は”無果汁”であることです。開発当時には果汁を炭酸に混ぜる技術や製法がなかったための製造方法でしたが、現在も「開発当時からの味や製法を変えない」というポリシーにのっとり、無果汁のまま受け継がれています。

画像2

 合宿では、実際にゼミ生全員が事前に取り寄せたマスカットサイダーを試飲しました。

・べたべたせず、後味がさっぱりで飲みやすい。
・甘さがちょうどよくて、マスカットサイダーの香りがいい。

 マスカットサイダーはビンを容器として使用していて、開発当時は三ツ矢サイダーの瓶を再利用しながらハイカラなデザインとして、現在は“レトロ”なデザインとしてビンを使い売り出しています。
 また、ラベルには恵比寿様が描かれ、「商売繁盛」を願って開発当時から受け継がれています。

 ほのかに香るマスカットの香り、さわやかなマスカットの味、シュワっとすっきりする炭酸で、アイスをのせてフロートにしたり、日本酒割りをしたりアレンジもできるのが神田葡萄園のマスカットサイダーです。

(一番のおすすめの飲み方はビンのままで「ラッパ飲み」をすることだそうです。)

画像3

リアスワイン

 神田葡萄園の創業時から製造されている、もう1つの看板商品が「リアスワイン」です。
リアス式海岸を生かし、葡萄に吹き付ける潮風によってミネラルが与えられ、さわやかな酸味のあるワインが特徴です。
昭和28年(1953)に葡萄酒製造免許を廃止したことで、ワインの製造が中止されましたが、6代目熊谷晃弘さんによって復活し、平成28年(2016)に製造が再開されました。

 ラベルには、「N6」という表記があり、これは創業明治38年からの歴史とそれに対する敬意、そして6代目熊谷晃弘さんの決意の表れだそうです。ラベルにこだわるのは、商品の外見においてもお客様の視線を奪うことも重要な戦略であるからです。

 熊谷さんは、リアスワインをを「地元“陸前高田の”牡蠣などの海の幸とマリアージュする風味」をコンセプトに、他のワインとの差別化を図っているそうです

今年は特別な年に

 2020年は1年を通して、コロナウィルスの流行から始まり、最高気温の更新や台風が発生するほど不安定な気候が続くなどの異常気象の影響もあり、日本全体であわただしい年でした。
 葡萄も異常気象の影響で収穫量が落ち、コロナウィルスによる飲食店の自粛、休業の影響で商品を卸すことができず、売り上げも下がってしまったそうです。

そんな中でも、販売所のリニューアルオープンやマスカットサイダーの定期便を始めるなど、新たなことに挑戦する年でもありました。定期便は売り上げを増やすための試策でもありますが、第一は故郷の味を味わいたいという人に向けて始めたそうです。

画像4

                 提供者:(有)神田葡萄園様より

 2020年1月からは販売所リニューアルのためのクラウドファンディングに挑戦されました。約2か月で達成し、5月に農園らしさ、“どこか温かみを感じる”販売所としてリニューアルオープンされました。将来的にはワインやマスカットサイダーに合った食事も提供できるようになりたいと考えているそうです。今回のクラウドファンディングに対して熊谷さんは、資金を募ることへの抵抗を感じていたそうですが、お客様からの「応援しているよ」という肯定的なお話をいただき、改めて“お客様の存在”に気づかされるきっかけとなったそうです。

6代目として

 明治38年(1905)から115年の歴史がある神田葡萄園を引き継いだ6代目熊谷晃弘さんですが、現在もまだまだ勉強中であるとおっしゃっています。6代目としてリアスワインを復活させることができたが、「東日本大震災」を自身が経験したことでより成長できたと考えているそうです。

画像5

 これまで、陸前高田とのつながりを大切にした様々な活動を行っていますが、これからは新規のお客様を広げていくことはもちろんですが、既にファンになってくださったお客様をより“強いファン”になってもらえるよう大切にしていきたいと話していました。

担当者より 

 私は3年生で現地に実際に行ったことがないため、初めて神田葡萄園のクラウドファンディング、こだわりを大事にしているマスカットサイダー、リアスワイン、神田葡萄園を経営されている熊谷さんご自身の六代目のお話などを聞かせていただきました。
 神田葡萄園は、まず何といっても驚きの創業が明治38年1905年。115年も続いている葡萄農園であり、東日本大震災では1メートルほど浸水してしまったのにもかかわらず、工場を誇りに思って続けられていることがわかりました。
 マスカットサイダーは味、製法を変えず、そこにも熊谷さんの神田葡萄園への愛、誇りを持っていて素敵であり、私も何か長い間誇りを持てるものを持ち、大事にしたいと思いました。
                             (3年 黛) 


 今回の合宿はコロナ禍のため現地に訪れることが叶いませんでしたが、このような社会の変化があったからこそ聞くことができた話がたくさんあり、115年を迎える神田葡萄園が素敵な企業であり、熊谷さんの思いを感じることができました。
 そして、このようなコロナ禍の状況で先が不安に感じる中で、陸前高田市の方々とつながれたことはとても素敵な思い出であり、今後も太田ゼミでカタチは変わりながらもつながりを続けてほしいと思いました。
                             (4年 伊藤)

画像6