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20240915

 まえに進む。まえに進もうとする。そう意気込んで階段の一段目に右足をかけた途端、レンガに見えていたはずのステップが砂のきざはしに変わる。別の踏み板を試しても同じ空振り感覚が繰り返されるのは今さら分かりきったことです。自分にそう言い聞かせ、失望にあらかじめ保険を掛けておく。いっそ散らばった砂をあつめて土嚢袋の階段でもつくろうかとすら思う。それでもなお性懲りなく、すべてを見渡せる場所にまでつづくありえない階段を探す癖が、たぶんしばらくは無くならないのだな。「しっしょうたいりき、しっしょうたいりき、るかいにつげていわく、あきらかにきけ、あきらかにきけ、よくこれをしねんせよ、われいまなんじに、きょうしもろもろのあくきん、りくげだつのみちをのべん、と。」(宮沢賢治『二十六夜』)

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