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ヘルマンリクガメのふるさとーボスニア・ヘルツェゴビナ:思い出の本と共に初めてのひとり旅へ―

小学生の頃に初めて読んで以来、何度も読み直しているお気に入りの一冊。
その本がきっかけで、私は初めてのひとり旅の目的地を、
ボスニア・ヘルツェゴビナにしました。

「哲学的意味がありますか?」

一九九一年四月。雨宿りをする一人の少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。
彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国したとき、おれたちの最大の謎解きが始まる。覗き込んでくる目、カールがかった黒髪、白い首筋、『哲学的意味がありますか?』、そして紫陽花。謎を解く鍵は記憶の中に――。

忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。著者の出世作となった清新なボーイ・ミーツ・ガール・ミステリ。
米澤穂信「さよなら妖精」

「ボスニア・ヘルツェゴビナ」とは

ボスニア・ヘルツェゴビナは、
バルカン半島に位置する国です。
北部から西部はクロアチアに囲まれ、東部はセルビア、南部はモンテネグロに囲まれています。

社会科で習った「サラエボ事件」と聞けば、ピンと来る方もいるかもしれません。
首都のサラエボでは、第一次大戦のきっかけと言われている、
1914年にオーストリア皇太子夫妻がセルビア人青年に暗殺される事件(サラエボ事件)が起こりました。
近現代史以降も、様々な国に併合されたり独立したりを繰り返した国の一つです。

ボスニア・ヘルツェゴビナと私

この記事で、1か月ほどスロベニアに滞在していた時期がありました。


その際にどうしても行きたかった国の一つが、
旧ユーゴスラヴィアの国の一つである、ボスニア・ヘルツェゴビナでした。

「もともと同じ国だった国が、ある日いきなり違う国になったり争ったりした後、どのように新しい日常を送っていくのか」
冒頭にあげた本を読んでから、旧ユーゴスラヴィア紛争に関心をもった私は、
政治学の最終レポートで、自分で自由に問いを立てて書く課題であった際、旧ユーゴスラヴィア解体の考察をテーマとして選ぶほど、当時読んだときには衝撃で、記憶に残っていました。
(選んだテーマがあまりに途方もなくて、図書館にこもりきりだったのもよく覚えています…)

紛争と共に、自然や造形物の多くが壊されたと聞きます。
人だけでなく、きっとリクガメをはじめとした動物たちにも大きな影響があったのでしょう。

博物館を訪れた際、博物館スタッフのあまり歳の変わらなそうなお兄さんと話していた時、
ふと展示されている犠牲者の写真を指差して「僕の兄もいるんだ」と言われました。
その時、戦争が歴史の中だけでなく、自分の生きてきた時期にもあったことを、まざまざと思い知らされました。

モスタルの街。
2005年に多民族・多文化の共生と和解の象徴として、
ボスニア・ヘルツェゴビナ初の世界遺産となった旧市街です。
イスラム教のモスク、カトリック教会、セルビア正教会などがあり、
複数の宗教が併存していました
「1993年を忘れないで」
訪れた当時は銃弾の跡が生々しく残っていました。


穏やかに流れる首都サラエボ内の川


かつてのサラエボオリンピックの跡地が墓地に。
これだけの量のお墓に刻まれている年は、
ほとんどが1990年代の紛争の時期です。
横を歩きながら同じ年の墓標が並ぶ景色に、
言い表せないような気持になったのをよく覚えています。

ボスニア・ヘルツェゴビナにまつわる好きなもの

きっかけとなった本の作者である米澤穂信さんは、私にとって大好きな作家さんの一人です。
「日常の謎」をめぐるミステリーとして、とても読みやすくておすすめです。

私は読書が好きですが、読むタイミングによって、捉え方が変化するという体験をさせてくれたのは、間違いなくこの本でした。

・歴史的なことを詳しく知らず、物語として読んでいた小学生のとき
・世界史で旧ユーゴスラヴィア内戦を勉強してから、単純な世界史の単語としてでなく、
 その背景にはどれだけの出来事があったのかを想像した高校生のとき
・日本へ帰国する飛行機の中で、自分が現地で実際に目にしたことたちも頭に浮かびながら読み直した大学生のとき

その時その時のタイミングで積み重ねてきた時間や経験、
思っていることがあるからこそ、
どの文章があざやかで鮮明に自分の中に入ってくるのか、
解像度があがるのかという、
ひとつの味わい方を知った大切な本でした。

皆さんにとって、読んだ時によって視点が変わったような本はありますか?


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リクガメのごはん屋さん
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