ヘルマンリクガメのふるさとーボスニア・ヘルツェゴビナ:思い出の本と共に初めてのひとり旅へ―
小学生の頃に初めて読んで以来、何度も読み直しているお気に入りの一冊。
その本がきっかけで、私は初めてのひとり旅の目的地を、
ボスニア・ヘルツェゴビナにしました。
「ボスニア・ヘルツェゴビナ」とは
ボスニア・ヘルツェゴビナは、
バルカン半島に位置する国です。
北部から西部はクロアチアに囲まれ、東部はセルビア、南部はモンテネグロに囲まれています。
社会科で習った「サラエボ事件」と聞けば、ピンと来る方もいるかもしれません。
首都のサラエボでは、第一次大戦のきっかけと言われている、
1914年にオーストリア皇太子夫妻がセルビア人青年に暗殺される事件(サラエボ事件)が起こりました。
近現代史以降も、様々な国に併合されたり独立したりを繰り返した国の一つです。
ボスニア・ヘルツェゴビナと私
この記事で、1か月ほどスロベニアに滞在していた時期がありました。
その際にどうしても行きたかった国の一つが、
旧ユーゴスラヴィアの国の一つである、ボスニア・ヘルツェゴビナでした。
「もともと同じ国だった国が、ある日いきなり違う国になったり争ったりした後、どのように新しい日常を送っていくのか」
冒頭にあげた本を読んでから、旧ユーゴスラヴィア紛争に関心をもった私は、
政治学の最終レポートで、自分で自由に問いを立てて書く課題であった際、旧ユーゴスラヴィア解体の考察をテーマとして選ぶほど、当時読んだときには衝撃で、記憶に残っていました。
(選んだテーマがあまりに途方もなくて、図書館にこもりきりだったのもよく覚えています…)
紛争と共に、自然や造形物の多くが壊されたと聞きます。
人だけでなく、きっとリクガメをはじめとした動物たちにも大きな影響があったのでしょう。
博物館を訪れた際、博物館スタッフのあまり歳の変わらなそうなお兄さんと話していた時、
ふと展示されている犠牲者の写真を指差して「僕の兄もいるんだ」と言われました。
その時、戦争が歴史の中だけでなく、自分の生きてきた時期にもあったことを、まざまざと思い知らされました。
ボスニア・ヘルツェゴビナにまつわる好きなもの
きっかけとなった本の作者である米澤穂信さんは、私にとって大好きな作家さんの一人です。
「日常の謎」をめぐるミステリーとして、とても読みやすくておすすめです。
私は読書が好きですが、読むタイミングによって、捉え方が変化するという体験をさせてくれたのは、間違いなくこの本でした。
・歴史的なことを詳しく知らず、物語として読んでいた小学生のとき
・世界史で旧ユーゴスラヴィア内戦を勉強してから、単純な世界史の単語としてでなく、
その背景にはどれだけの出来事があったのかを想像した高校生のとき
・日本へ帰国する飛行機の中で、自分が現地で実際に目にしたことたちも頭に浮かびながら読み直した大学生のとき
その時その時のタイミングで積み重ねてきた時間や経験、
思っていることがあるからこそ、
どの文章があざやかで鮮明に自分の中に入ってくるのか、
解像度があがるのかという、
ひとつの味わい方を知った大切な本でした。
皆さんにとって、読んだ時によって視点が変わったような本はありますか?