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お年寄りの記憶の残り方

母は、数年前に彼女の妹、つまり私から見れば叔母を亡くした。

もちろん、そのことは亡くなった直後に母に伝えていて、その時はとても驚いてショックを受けた様子だった。

ところが、それから時間を経て一周忌が近づき、改めてその話をしたところ、「え、そうだったの?」と再び驚かれてしまった。つまり、母は妹の死を全く覚えていなかったのである。

そして、この話はその後更に2回ほど伝える機会があったのだけど、都度忘れられている。「年寄りは、最近のできごとへの記憶が苦手である」という俗説が、見事に再現されたように感じる。

叔母の葬儀の際、母は体調不良もあり出席できなかったことから、私が名代も兼ねて列席した。だから、母は葬儀に参加してはいない。

しかし、さすがにこれはかなりの重大事なのに、ここまできれいに忘れられていることには驚いた。更に、何度も伝えたのに記憶に残っていない現実に少なからず落胆した。

なお、それでは昔のことは覚えているのかと問われると、それも微妙と答えざるを得ない。私についての記憶に、従兄の内容が混ざることが少なくなく、サラリーマンである私に「店の商売はどう?」と聞いてきたりする。

老いによる記憶の残り方は、最後は個々人によって差が出るとは思う。よく言われる「お年寄りは昔のことはよく覚えている」との説も、上述の自分の経験から、必ずしもそうじゃないと思っている。

むしろ、基本的に記憶全般の繋がりがかなり曖昧になっているため、それに期待してはならないと考えた方が無難だと感じている。

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