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私が人生で出会った最も端的な文章をお伝えしたい

冷え込みがきついですが、皆様お元気でお過ごしでしょうか?

さて、……

今回はちょっと変わったことを書いてみる。自分が高校時代に出会った文章の思い出である。

もったいぶらずに書く。タイトルに記載した「私が人生で出会った最も端的な文章」は以下の通り。

おばあちゃんが死んだ。勉強部屋ができちゃった。

私は、この文章の持つ力に圧倒された。たった二つの文で、この家族に起こったできごとの全てを語り尽くしている。しかもそれに留まらず、余韻を残しつつ更なるストーリー展開を読者の胸中に湧き起こす、すごい文章だと思う。

これは、最低限以下の文章を要約していると考えられるのだけど、それを書くのが野暮になると思うくらいである。

僕はおばあちゃんと暮らしている。家が小さく部屋数が少ないので、僕の個室はない。でも、ある日おばあちゃんが死んじゃった。葬儀が終わって平穏が戻り始めたある日、両親から「おばあちゃんの部屋が空いたから、お前の部屋にする」と言われた。だけど僕としてはイマイチ喜べない。

人により多少の解釈の違いはあると思うのだけど、大体こんな感じのストーリーが背景にあるのではないかと思われる。それをベースにして、極限まで言葉を削ると、冒頭の二文に収まることになると思っている。

この二文の破壊力は、かなりすごい。客観的状況も、筆者の感情も、残された家族それぞれの思いも、全て表現されている。直接書かれていないことまで、容易に推測できてしまう。

アドレス短文化とは異なり、しっかり元の文章のエッセンスが残っているところがすごい。これを文才と言うのではないかと考えている。

更なるストーリーとして、筆者は自分の部屋が欲しい気持ちの存在、それが突然手に入ったけど素直に喜べない困惑、おばあちゃんの思い出、両親の場当たり的な対応への不満、等が湧いてくるように思われる。

それらを一通り書き連ねるだけでも、ショートショートとして成立する。だからこそ必要最小限のことを書いた能力に脱帽してしまう。

この文章は私が高校時代に出会ったもので、その作者が今どうされているのかは分からない。もし御存知の方がいたら、ご教示頂ければ幸い。

お読み頂き、ありがとうございました。

読んで頂いただけでも十分嬉しいです。サポートまで頂けたなら、それを資料入手等に充て、更に精進致します。今後ともよろしくお願い申し上げます。