我が青春の回鍋肉

私と回鍋肉の出会いは、もう30年以上前に遡る。

大学進学を期に安アパートで始めた東京生活。日々の生活費を安く上げるため、外食を控えて自炊するようになった。

私はそれまで、調理経験はほとんどなかった。強いて言えば、目玉焼きを焼いたことがある程度。しかし、必要とあればやらねばならなかった。

最初はご飯を炊いて、肉や卵をただ焼くだけだった。厳密には生卵や納豆もあったけど。ある時「昼の学食がディナーである」と言ったら、自宅生からいたく同情されたことを今でも覚えている。

試行錯誤を重ね、少しずつレパートリーが増えていった。元々食べることは大好きだったので、そういう努力は惜しまない。シチューくらいは作れるようになった。

そんなある日、近所のスーパーでクックドゥという商品を見かけた。その中で、回鍋肉が一際私の目を引いた。

私は、その外装箱に手を伸ばし、作り方と共に箱に記載された材料を買い求めた。最後にこの箱中のレトルトの中身を混ぜて炒めれば完成するらしい。これならできそうだと思った。

キャベツやピーマンを切るのは一手間掛かるが、それ以外は楽勝であった。皿に盛り付けて食べてみる。うまかった。それまで食べたことがない料理であったが、これはかなりおいしいと思った。

私は名古屋出身である。味噌味に慣れ親しんでいたのが、この出会いの成功をもたらしたと思っている。

なお、軽く3人前できてしまったのだけど、若気の至りで完食したのはご愛敬。

その後、同郷の友人に「この前作ってみたんだけど、意外に簡単にできたよ」という話をしたところ、ことのほか興味を持ってくれた。

しばらくしてその友人から「どえりゃあうまかったでかんわ」との感想をもらい、名古屋人に共通するDNAを感じた。

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