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進む認知症③(忘れられることをやむなしと思えるか)

「お母さん、覚えていないでしょう? お昼に食べた物だって覚えていないんだから、先月に会ったことだって忘れちゃうよね」

少し、気の毒な質問であったかも知れない。しかし、ここで母が
「お昼ごはんなんて食べていない」
と言い出さなかったことは、ホッとした。もしそう言い出したら、更に認知症が進んでいることになるからだ。

母の脳裏に(もしかしたら目の前のこの二人は自分の子どもで、本当に先月にも来ていたのかも知れない……記憶は無いけれど…)という懐疑が芽生えたのだろうか、言葉のトゲが抜けた。

それでも、既に亡くなった自分の妹(我々から見れば叔母)の様子を尋ねてきたり、商売の調子を聞いてきたり(我々2家族は、いずれもサラリーマン家庭)といったズレは存在していた。

何回目になるか分からない程私が話してきた自分の妹の死の知らせに毎度新鮮に驚き、ショックを受けた表情を浮かべる母の様子を見ると、こちらも辛くなる。そんなやり取りをしているうちに、面会時間は終了となった。

母にどう対応したものかと思いつつ、名案があるなら既に広まっているだろうとの諦めもある。もっとも、母も今頃はこの日話した内容はもちろん、我が子が面会に来たことも、またきれいに忘れているだろうけど。

読んで頂いただけでも十分嬉しいです。サポートまで頂けたなら、それを資料入手等に充て、更に精進致します。今後ともよろしくお願い申し上げます。