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適切なエスプレッソ抽出のためのパックをつくる

1.バスケット内の粉が均一に並んでいることが最重要

だまがなく、上下左右が同じ密度で、同じ粒度分布であること。

エスプレッソ抽出の際は基本的には8〜9barとコーヒーベッドには非常に大きな圧力がかかる。その為、一部分でも小さい偏りやエアポケットなどがあると大きな圧力が不均一にかかることになり、抽出に大きく影響を与えてしまう。

密度の低いところに流量は集中し、チャネリング が起きる。そのため抽出にムラができ、苦味、収斂味が出やすくなってしまう。(出がらしっぽさ、豆豆した感じ)

チャネリングとは↓

ディストリビュージョンとは↓

ドーシング、タンピングの重要性

2.完璧に詰まっているのもだめ?

エスプレッソではコーヒー豆を極めて小さい粒子状にグラインドしてバスケットに詰める。その後、タンピングによって押し固められ、グループヘッドに装着して高圧で抽出する。つまり、小さくグラインドするとはいえ、抽出の際に湯が通り抜けられるだけの隙間は必要になる。そうでないと湯が下に落ちてこなかったり、抽出時間が伸び過ぎてしまって良いエスプレッソ にならない。

また、グラインドしたコーヒー豆は粒度分布が示すように狙ったサイズの粒子とそれより大きい粒子、小さい粒子が必ず存在する。それらがバスケット内に混在することになる。そのため、湯が適切に流れるグラインドサイズに設定して均等にパックに詰める。かつ、なるべく最小のグラインドサイズに設定して収率を上げることでより濃厚でボディのあるエスプレッソができる。ただし、細かくしすぎると細かい味になったりフレーバーや、酸は出ずらくなるので注意。あと、パックの面積が小さいほどチャネリングは起きやすくなるのでそれも注意。

湯の透過性はパックがどれだけきつく詰められているかにも影響を受ける。パックの密度が30%上がると、流量は1/3~1/4まで減少すると言われ、一部分だけキツく詰められている部分があると、抽出の均一性は失われる。(全部が同じようにきつく詰まってる分には抽出時の圧力でそれ以上にキツくつまるのでまだ良い)。そのため、使用するグラインダーの粒度分布(主に微粉の量)を理解し、パックが圧力によって押し固められた際でも適切な抽出がされるようなグランドサイズを設定し、パック内に均等に粉を詰めて、完璧に水平なタンピングが非常に重要になる。(タンピングの圧力は一定以上からは抽出での収率の変化などは見られない)

それらを理解し、各動作を安定させることがエスプレッソの安定に繋がる。

3.良いパックはパックの厚みが薄いこと?

抽出時はパックの上から下へ湯が浸透していくので、パックの厚みが薄いということはパックの上下での不均一性が抑えられることになる。

抽出の際はパックの上部に高圧で湯を注ぎ続ける為、上層では効率的に抽出が行われる。しかしパックの下層に行くほど流れる湯には、すでに可溶性のコーヒーの成分が多く含まれていて、湯温も低下している。さらにはかかる圧力も上部よりかなり低下していることが多く、下層での抽出効率は上層に比べかなり低くなる。

可溶性成分の量を調べた研究では一貫してパックの下層では上層に比べ、可溶性成分が多く含まれていることがわかる。また、抽出開始直後の下層では、抽出前のコーヒー粉よりも多くの可溶性成分が含まれていて上層で抽出された可溶性成分が下層の粒子間に含まれるからだと考えられる。

研究からも分かるように、パックの下層での抽出効率はかなり低くなっていて、抽出終了時点において完全に抽出できていない場合もあることが分かっている。

パックの上下間での不均一性を改善するためにはパックの厚みを薄くすることが大切であると分かる。そのためにはパックの厚みを薄くすることが重要であり、それを実現するためにはグラインドサイズをより細かくすることにつながる。

パックを薄くする→コーヒー豆をより細かくグラインドする→粒子の表面積の増加→収率を高めることにもつながる。

一般的に高い収率で抽出されたエスプレッソは濃厚で複雑味があり、優れたエスプレッソであると言われる。

ただし、粗いほどフレーバーや酸は出やすい傾向があるので最終的には味わいで評価して調整していく必要がある。


4.まとめ

良いエスプレッソをつくるためには良いパックでなければいけない。すべてが均一でムラがないこと。そのためにグラインドから始まり、ドーシング、ディストリビュージョン、タンピングと全ての手順に意味があるということを理解して、各手順の目的を明確にすることが適切なエスプレッソ抽出において一番重要だと思う。後は、味覚の正確さと出したい味わいを明確にすること。


5.あとがき

まとめるほど、バリスタという仕事に魅力を感じる。知れば知るほど、深くて底無し沼が広がっている。美味しい先にもっと美味しいがあって、感動があって。簡単じゃないよ。感動は。






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