月瀬りこ

noteは書きたいものを自由に書いています。 脚本家・小説 / 第30回フジテレ…

月瀬りこ

noteは書きたいものを自由に書いています。 脚本家・小説 / 第30回フジテレビヤングシナリオ大賞佳作受賞 / 映画「フローレンスは眠る」https://youtu.be/LbTaNYGPvUY ほか / 小説 (Kindleほかで発売)/ドラマプロットほか / コピー

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  • 月瀬の仕事

    月瀬りこ のおもな仕事

  • お父さんシリーズ

    我が家で起こった出来事を綴ったエッセイです。 この「お父さんシリーズ」はずーっと前、ほかのところでこっそり書いていたエッセイ。私が脚本を書くようになる前に、ひょんなことから、尊敬する脚本家の先生に見つけてもらったエッセイ。 「お父さんシリーズ」名づけも、その脚本家の先生です。

  • 愛の不時着 「あの日」考察

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秘宝館の娘

私は 「秘宝館の娘 」である。 実家が突然、秘宝館になったのだ。 きっかけは父のガンからの生還。 彼は生から性へのさらなる飛躍をしたのである。 それは突然に訪れた。 日に日に家の中に、いわゆる「開かずの間」が増えていったのだ。 「なぜ応接間が立ち入り禁止?」と父に聞いてもニヤニヤとしているだけで決してそのワケを答えようとしない。 母においては、その話題に触れてはいけないという殺気をビンビンに放っている。 ……ということはある程度の予測はつく。 よからぬことに違いな

    • 三度目のワクチン ノババックス

      7月29日金曜日、午前11時過ぎ。 三度目のワクチン接種。 第七波もあり、区の会場などでは数日前から予約が取りづらい。 取れたとしても、場所が遠かったりする。 ワクチン一回目の後、デルタに感染し、入院した経緯があるので、二回目は退院したあと、三ヶ月以上経過してからの接種。 そのため、三回目は、ワクチン接種の時期がズレてしまうことはわかっていた。 一回目の後は発熱と倦怠感、二回目も同じく発熱と倦怠感が続き、三日くらいはベッドで過ごした。 三回目を打つ頃には感染者数も少なく

      • 入院生活は、未知との遭遇

        5日に発症、自宅療養を経て、11日に受け入れてくれる病院が見つかり搬送されることになった。 二回、救急車を呼び、搬送されなかっただけに、保健師さんの病院探しの粘りには心から感謝している。 搬送先の病院は、自宅から車で一時間の所にあった。 コロナ専用のタクシーを保健所が用意してくれた。 たしかに40℃の高熱でありながら、一時間車に揺られていくのは辛かったが、今までの自宅療養のことを考えれば、へのへのかっぱである。 病院裏の専用搬送口にストレッチャーがおいてあり、医師や看護

        • 「母の涙と闘う保健師 〜私が陽性になった〜」

          8月5日の夜、発熱38.5度。 翌朝6日も熱が下がらず、38℃後半。 家にあったPCR検査キッドで調べると陽性。 そのままかかりつけ医院の発熱外来で再度、PCR検査。陽性判明8月7日。 (本当は週末をはさむため、結果は12日になるかもしれないと言われていたが、かかりつけの病院が頑張ってくれ、早急に判明した。感謝である) 病院から管轄の保健所への連絡8月8日。 (検査を受けた病院が、住民票のない区や市の場合は自宅住所のある保健所へ連絡してもらわないといけない) ちなみに、ワクチ

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        記事

          父、暴走。恐怖の回転寿司。

          父は食べるのが大好きである。 昔から、色んな食べ物屋さんに連れていってくれた。 しかしそのどこもが、 恐ろしく汚いが美味しいというホルモン屋さんだったり、カエル専門料理の店であったり、帰りに無理心中するんじゃないかと心配するくらい敷居の高い店であったりと、とても子ども連れで気軽に入れる店ではなかったりした。 だから、私は「家族でファミリーレストランに行く」というのがその当時の小さな夢だった。 昔はお鮨屋さんも回転していなかった。瀬戸内の小さな町だったので、お鮨は回転しなく

          父、暴走。恐怖の回転寿司。

          父、激走。女と耳について語る。

          うちの父にタブーという言葉はない。 大晦日の昼間だった。 慌ただしく妹と一緒に、母のお節料理づくりを手伝っていた時である。 成人した女が三人寄ってワイワイと料理をしている横で、様子を覗きにきた父が、突然、妹に言った。 「ちょっと耳を見せてみぃ」 妹は何のことかわからず耳を見せた。 父は 「ありゃっ!これは、男が離れられんわぃ」 と言った。 続いて私にも耳を見せろという。 父は、私の耳を見て、 「ありゃ!お前もか…っ!」 と、言った。 何を確かめているのかわか

          父、激走。女と耳について語る。

          父、泥酔。母に規制戦を張られる。

          父は酒と煙草と人間をこよなく愛する男である。 しかし、愛しすぎて失敗することが多々あるわけで……。 ある朝のこと、父の部屋の入り口付近に、ビニールの荷物ヒモが張りめぐらされていた。 刑事ドラマなどで「Keep out」と書かれているようなテープである。 げげげ!? 何が起こったんだろうと覗きこんでみたものの、部屋の中は別段変わった様子はない。 ダイニングへ行くと、父はいつものようにニヤニヤとテーブルに座って貧乏ゆすりをしていた。 母は父に背を向け台所で黙って朝食を

          父、泥酔。母に規制戦を張られる。

          父、覗きを裁かれる。

          父は、非日常が大好きである。 もめ事が大好きである…とも思う。 妹と私が 「あー。疲れた。人生に疲れた」 と、実家に居候した時である。 母は「好きにしなさい」と言い放ち、 父は「困ったもんよのぉ~!」と… 案の上、大喜びした。 私と妹は二人で、父の部屋の隣の部屋に居候した。 私たちは、 「この先、私たちって幸せになると思う?」 などと、真剣に話していた。 と、足音がする。 トットコ、トットコ、トットコ…。 「あ、お父さんがきた」 その通り。 次の瞬間、父がドア

          父、覗きを裁かれる。

          父、血迷う。演歌歌手になる。

          思いついたら即実行。 父に「ためらい」という言葉はない。 ある日、父が「お父さんは歌手になろうかなぁ」と言い出した。 なろうかなぁ=なる……である。 母は、「どうぞ」と知らんぷり。 子どもたちも知らんぷり。 言い出したときにはすでに始まっているに違いない。 止めても無駄である。 ある時など、父は、フラッと立ち寄った電気屋で店員にお勧めされるがまま冷蔵庫を買ったらしく、母に言えず、黙っていた。電気屋が配送に来て玄関チャイムを押した瞬間に白状した。「あ、冷蔵庫、買ってしま

          父、血迷う。演歌歌手になる。

          父、人助け。松の実と愛人さん。

          小学生の頃の話。 よくお客さんの来る家だった。 田舎のせいもあって、いつも応接間にはお客さんがいて、知らない人たちが食卓にいることもしょっ中だった。 今もそれは変わりなく、知らない人が知らないうちに一緒に座って紅白歌合戦を観ていたりする。実家に帰ってだらしなく寝そべってテレビなど観てお尻を掻いたりしていると、近所のおじさんが後ろにいて、ギョッとする。 ろくなもんじゃない。 ある日、父の小さな会社で働いている男の人がやってきた。 その人の裸踊りを見たことがある

          父、人助け。松の実と愛人さん。

          父、暴走して、母に捨てられる。

          父の電話は3回に1回しか出ない。 とにかく、面倒なことが多い上に、くだらないことばかりだからである。 たとえば、天気について永遠と語る… たとえば、今、テレビで面白い番組をやっているからすぐ観なさいと言う。 たとえば、自分が渡した骨董品を返せと言ってくる…などである。 その日、夜10時を過ぎた頃に電話が鳴った。 そんな遅い時刻に父から電話がかかってくることは珍しい。 いつも、早朝か、昼間が多いからである。 何ごとかあったのかと思って、1回で出た。 すると、やけに丁寧な父

          父、暴走して、母に捨てられる。

          父、暴走。踊る好々爺。

          「父、暴走。踊る好々爺」 数年前の夏のこと…。 毎年 お盆になると、父は 子どもたちが生まれ育った家に戻ってくるのをとても楽しみにしている。 数日前から 私たちが好きな食べ物をたくさん用意して首を長くして待っていてくれるのだ。 ハチャメチャな父も、家族が集まると好々爺の微笑みを絶やさない。 その夏もそうだった。 冷えたスイカを食べ、海へ行き、故郷ののんびりとした時間にひたっていた。 昼下がりには少し大きくなった甥っ子や姪っ子が居間に集まり、賑やかに走り回っ

          父、暴走。踊る好々爺。

          父、猿にまわされる。

          もう二十数年前になるだろうか。 なにを思ったのか、父がとつぜん… 「猿かわいいのぉ」 と、つぶやいた。 危ういながれを感知する力をもつことは我が家では必須だった。 「そうでもないとおもう」 と、家族は即座に淡々と否定した。 日○猿軍団やムツゴロウさんの動物番組が連日テレビを賑わしていた頃だ。 だいたいのところ、そういうドキュメントをみて、そのつぎの瞬間に父は必ず「わしもやろう」というのである。 案の定、「日本猿を飼いたい」といいだした。 「猿なんて飼ってどう

          父、猿にまわされる。

          父、暴走。骨董にはまる。

          凝り性の父。 焚き付けられたら勢いよく炎を上げる。 そう…燃え尽きるまで。 きっかけは父の実家である母屋を片付けていたときだった。 脱穀機やら、蓑笠やら、千歯こきやらが続々と出てきたことがあった。 もう使われていないものだったが、祖父母が納屋にしまっておいたものだろう。 そして、それと同時期に我が家の増築の際に古銭やら陶器などが出てきたことである。 そこから、何やら、不穏な動きがはじまった気がする。 古くて珍しいもの…つまり骨董というものに確実に目覚めはじめたのだ。

          父、暴走。骨董にはまる。

          父、暴走。庭に温泉を掘る。

          言い出したら絶対にあとに引かない父。 ある日、突然言い出した。 「庭に温泉を掘る」 庭に温泉……? 耳に入ってきた言葉がまったく理解不能。 何が庭に温泉だ。 いくら県庁所在地が有名な温泉どころといえ、掘ったからってすぐに温泉なんかでるもんか、いや、庭に掘るってそれなに?という感じだった。 しかし、言い出したら聞かない父。 温泉を掘り当てた後の莫大な構想をこれでもかと饒舌に語る。 24時間、湯水は使い放題。電気代もただ。 お客を呼んでひと稼ぎ。観光地にしてしまおう

          父、暴走。庭に温泉を掘る。

          父、暴走。お山の大将になる。

          モノマネが大好きな父。 おハコは 赤フンを身に付け、仕込み刀を振り回す…アレなのだが、時々、浮気する。 ある五月の晴れた日曜の朝……。 父は「ぼ、ぼくは、お、お、お散歩に行きたいんだなぁ……」と、突如ニヤニヤとしはじめた。 「出たよ……」 家族は当たり前のごとく無視である。 こういう時はそれぞれのやるべきことに集中し、決して父に同意しないという暗黙の了解。 そんな家族を自分に振り向かせるかどうかが父にとっての勝負である。 しばらくの沈黙のあと、無視する家族にへこた

          父、暴走。お山の大将になる。