見出し画像

B棟で、母の在宅介護がスタート



(2021年5月頃)

母が退院してきて2ヶ月。

団地の小さな部屋に引っ越しがおわって、いよいよ母と私の2人暮らしが始まった。

ここの団地は、ちょっと変わった作りをしている。

A〜D棟まで、4つの棟が、ロノ字になっていて、渡り廊下で全棟がつながっている。
四角く囲まれた真ん中には、中庭があって、ジャングルジムやブランコ、小さな丘を模した遊具がある。

昼間は、小さな子供たちの遊ぶ声が聞こえて、なんとも心地いい。

長男と次男は、それまで住んでいたD棟の部屋に住んでいて、1つ下に降りて、廊下を進めば、B棟の母との部屋に到着する。

そこは、地下鉄の駅の目の前で、バスターミナルもある。
ショッピングモールは全て徒歩5分以内に、イオン、ドン・キホーテ、あかのれん(衣料品店)、ニトリもある。


ここでなら、車椅子の母との生活も、楽しく暮らせそう。


藤井風さんの「きらり」という曲に、

「なんのために戦おうとも動機は愛がいい」

という節がある。

私はこの歌詞がお気に入りだ。

母の在宅介護を決める時、何度も何度も自問自答した。

在宅介護になれば、それまでやっていたマッサージサロンもやめなくてはならず、収入が激減する。

夜勤まで辞めてしまうと、収入がゼロになってしまうので、息子たちに私が夜勤の日は、代わりに泊まってもらう事になった。

後は、私の中の動機が、エゴからなのか、愛からなのか?

もし、エゴからなら長続きしないし、イライラも募るし、なんといってもうまくいかないだろう。
それは、過去の経験からわかっている。

ただし、動機が愛からならば、全ては自分のためなので、母に押し付けがましくもならないし、イライラもせず、愛に満ちた介護生活を送れるだろう。

もちろん、いろんな感情が入り乱れていて、愛だけで動くことは難しかった。

なので私は自分の気持ちを一つづつ、整理する事にした。

◉自分をよく見せたい。
◉母を施設に入れるのはかわいそう。
◉今介護をしないと、一生後悔する。
◉育ててもらったから、介護はやるべき

これらは、不安や恐れ、見栄からきているのでエゴに分類した。

そして、


◉お母さんと仲良く暮らしたい
◉お母さんが快適に暮らせるようにしてあげたい
◉のんびり暮らしてみたい
◉お母さんと美味しいものを思い切り食べたい

こちらは、私がやりたいこと、自分や母への愛からきている。

どっちの気持ちの方が大きいかな?

エゴ的な気持ちも沢山あったし、最後まで消すことはできなかった。
しかし、毎日、自分の気持ちに向き合っていくと、自然と愛からの動機の方が、どんどんと膨らんでいった。

トータルの収入は減ってしまうけど、生活費は母親の貯金から出す事にしたので、お金の面はクリアになった。

私は兼ねてから働きすぎる傾向にある。

母子家庭だという事もあるが、空いた時間があると、何か経済活動をしたくなってしまうのだ。

よし、ここは昔から憧れていた「専業主婦」をやってみよう。

母を面倒見ながら、日々の家事をやり、余った時間で、ゴロゴロしたり、本を沢山読んだり、テレビやラジオを聞いたり、絵を描いたり、ビールと美味しいつまみを食べたり、


年老いた母親と、たわいもないおしゃべりを楽しんだりしてみよう。

これはきっと、とっても幸せな貴重な時間になりそうだ。

そして、一連の流れがあり、いよいよB棟での生活が始まった。

元々、3DKの間取りだったのを、1部屋にして、台所やお風呂、トイレも使いやすくリフォームされていた。

そこに、介護用のベッドを置き1日を過ごした。

母は、パーキンソン病も患っていたが、歩く以外はとても元気で良く食べた。

車椅子に乗せて、一緒にイオンに買い物にも出かけた。

彼女は、思っていた以上にグルメで、一緒に買い物に行くと、2人暮らしなのに、1万円ほど食料品を買った。

特に、フルーツやお肉にお金をかけていた。

私はというと、若い頃に離婚して母子家庭だったので、食べ物にそこまでお金をかけられなかった。


母の食事へのお金の使い方に、最初はびっくりしたが、すぐに慣れた。

私が飲むビールも、母のお財布から買ってもらった。

買ってきた食材で私がご飯を作り、2人で晩酌をするのが、とても楽しかった。

味付けや見た目が悪いと、母からアドバイスをもらった。以前の私なら、「いちいちうるさいなぁ。せっかく作ってやったのにチクショー」となっていたと思うが、

私がやりたくて母の介護をすると決めたので、なんでも素直に聞き入れることができた。

おかげで、私の料理の腕も上がった。

また、「あさイチ」のお料理コーナーと、「DAIGOも台所」という番組を毎日チェックして、美味しそうなメニューは、すぐに作ってみた。


とにかく、食卓がとても豊かなことが嬉しかった。

結局、B棟での生活は3年で終わり、今は母1人で、「サービス付き高齢者向け住宅」に住んでいる。

デパートにお買い物に行ったり、旅行に行ったり、私の友達が来て飲み会したり、NHKあさイチさんが取材に来たりと、とっても楽しい3年間だった。

この時のいろんな話を、これから少しずつ書き溜めていこうと思う。


「動機は愛がいい〜」
マジで素敵な歌詞だわー。

❤︎LOVE&MIND&SOUL&MUSIC♬

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?