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日本の戦略をアレンジしたドイツの新PCR戦略

ドイツで新型コロナの感染者が急増している。

ロックダウン解除以降も1000人前後で推移していた新規感染者は夏休みが終わっても急増することはなかったが、10月はじめには2000人ほどになったところで、メルケル首相が「指数関数的に増えていく可能性がある」と警告を出すのを聞いたのも束の間、10月17日現在で7830人となった。

新規感染者の多くは、無症状もしくは軽症の若者だ。パンデミックの始まった当初から急ピッチでPCR検査体制を整えたドイツは、週150万件超という驚異的なPCR検査体制を持つ。検査の実施件数が増えた分、報告される感染者が増えたという部分が大きいから落ち着くようアナウンスが出てはいるが、ICUに入る患者数や死者数がじわじわと増えていることは気がかりだ。

ドイツには約3万床のICUベッドがある。10月16日現在、その約70%の21500床が埋まっている。うち新型コロナ患者は約700人、その約半数が酸素投与を受けている。酸素投与を受ける人の割合がICU患者の約50%という部分はずっと変わっていないが、ICUに入る人の数が362人(10月1日)と同じく約半数だったことを考えるとやはり心配にはなってくる。

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こうした状況の中、ドイツ政府は冷静を呼びかけつつも、再ロックダウンしないためには「今が大事な局面」として積極的に警戒を出している。そして、その警戒は、流行状況に応じて刻一刻と変わっている。

そうした変更のひとつが、気温が下がり屋内で過ごす時間の増えたこの時期にこそ「換気」を意識的に行うよう呼びかけたことだ。

ドイツにおける個人での新型コロナ対策は、「AHA」というキャッチフレーズで呼びかけられている。「ソーシャルディスタンシング(Abstand halten)」「手洗い・消毒(Hygienemassnahmen)」「マスク着用(Alltagsmasken tragen)」の3つの頭文字だ。これに新しく加わった「換気(Lueften)」の「L」を入れて、最近では「AHA+L」と言うようになった。

先述のとおり、新規感染者が増えていると言っても現在のところは若い人中心で、死者や重症者は多くはない。となると、当然おきてくるのが「では、マスクとソーシャルディスタンシングと手洗い消毒をがんばっていればいいのか?」という疑問の声だ。

しかしドイツの専門家は、それでは不十分だと言う。そして、大切なのは「クラスター対策だ」という。

日本が当初から力を入れてきた、あのクラスター対策である。

先ほどの「換気」の勧告に加えて、日本の皆さんにぜひ聞いて欲しいのが、最近、入国時のPCR検査体制に変更があったことだ。

これは、日本が採ってきた「クラスター潰し」を主目的とするPCR戦略を新たな知見に基づいて合理的にアレンジした、なかなか興味深い戦略となっている。

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