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「難民列車」の7時間

プラハ中央駅のホームからベルリン往きの電車に乗ると、デッキに何人かが座りこんでいて、ずいぶんと混んでいるようだった。苦労して中に入ると、指定していた席に5歳くらいの男の子を抱いた若い男性が座っていた。

「すみません、この席を指定しているんですが」

英語もドイツ語も通じない。

男の子の父親かと思ったが、よく見ると顔にはあどけなさが残っている。15歳くらいだろうか。横の4人がけにいた金歯の目立つ高齢の女性が何かを捲し立てるように言うと、少年は子どもを連れ、表情ひとつ変えずに後ろの4人かけの方に行ってしまった。そこにはすでに子ども4人と大人2人が座っていた。

プラハ往きの電車に貼ってあった路線図の北西の端はわたしの暮らすハンブルク、北東の端はウクライナの首都キエフを示していた。近くで戦争が始まったという認識を新たにすると共に、帰りの電車はウクライナに隣接するハンガリーからの国際列車であることにも気づいた。

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【上図(↓)を拡大したのが下図(↓)。赤丸がハンブルク、青丸がキエフ】

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念のためドイツ鉄道(DB)のウェブサイトで混雑状況を確認すると、「座席には余裕があります」となっていた。しかし、帰る前の日の夜、もう一度ウェブサイトを確認すると「中程度の混雑」に変わっていた。

大きな荷物は毛布だけ

ヨーロッパの電車は指定席と自由席に分かれてはいない。どうしても座っていきたい人は料金を払って座席指定し、座席を指定していない人も空いている席があれば座れる。

実際の列車は、中程度の混雑どころか車両のすべての席が座席の数以上の人で埋まっている状態だった。しかも、座っている人の大半が子どもで、どの4人がけにも6人から8人は座っている。

それなのに、網棚に乗っている荷物はほとんどない。時どきちょこんと乗っている荷物は毛布だけだ。大人の男性は年寄りだけで、あとの客はすべて女性と子どもだった。

彼らがニュースで連日報道されているウクライナ難民なのだろうか。

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