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武漢にある、もう1つの研究所への疑惑

世界が「バイデン報告書」の発表を待っていた8月25日、WHOウイルスの起源の調査チームの専門家は連名で、科学誌「ネイチャー」に「新型コロナウイルスの起源:カギとなる調査のための窓は閉じかけている」と題したコメンタリーを発表した。今年1月に実施され、3月末に発表された調査報告書では、研究所漏洩説は「極めて可能性は低い(least likely)」と評価した理由を釈明しながら、初期の患者群の検体や疫学データの再解析など自然変異説を前提とした更なる調査の実施を強調した。

新型コロナウイルスの起源の調査は昨年5月、初のオンライン開催となったWHO総会で「独立した第三者による国際的なチーム」で行うものとして議決されていた。しかし、コメンタリーでは、中国政府は中国の専門家チームと同人数、かつ中国の許可したメンバーのみで構成されたWHO専門家チームとの合同調査の形でなければ調査を受け入れないと主張し、WHOチーム側の調査計画には武漢ウイルス研究所の調査は含めないという条件での調査受け入れが決まったことが明らかにされた。武漢入り後、中国チームと議論を重ねた結果、研究所漏洩説は無視できないほど重要であることから報告書にも仮説として記載することが決まり、調査報告書にも「研究所漏洩説の可能性を示唆する新しい証拠が出てくれば次回の調査の際に精査する」とも書いたが、今のところそうした証拠は一切見つかっていないという。

中国は今年研究所漏洩説の可能性の検索も含むWHOによる2回目のウイルスの起源の調査を拒絶し続けてきた。同コメンタリーは、研究所漏洩説を強調するトーンから一転、自然変異説の可能性が高いとする概要をほぼ同時に発表した「バイデン報告書」と協調しながら、武漢ウイルス研究所の調査を実施しないことを条件に、第2回目の調査を中国に受け入れさせることを急ぐ布石とも取れるものだった。

もう1人のピータ―の不可解な行動

いま、コメンタリーは「WHO新型コロナウイルスの起源の調査チームの専門家は連名」で出されたと書いた。著者の総勢11名。そこにはWHOチームの専門家12名のすべての名前があったわけではなかった。名前がなかったのは、

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