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メンタルヘルス、メンタルのこと。

こんにちは、りこ@産業医兼労働衛生コンサルタントです。
いよいよ、メンタルヘルスについて書いてみようと思います。
私の最も興味があり、ずっと携わってきた分野ですので、何回かに分けてしっかり書いていこうと思います。

心の健康=メンタルヘルス

メンタルヘルスという言葉は、mental=精神的な health=健康 からきています。第66回WHO総会(2013年5月)において包括的メンタルヘルスアクションプラン2013−2020が採択され、そのメンタルヘルスアクションプラン2013−2020から下記の文章を引用します。

第66回WHO総会(2013年5月)において包括的メンタルヘルスアクションプラン2013-2020(以下、アクションプラン)が採択された。アクションプランは“No health without mental health(メンタルヘルスなしに健康なし)”を原則に、精神的に満たされた状態(mental well-being)を促進し、精神障害を予防し、ケアを提供し、リカバリーを促し、人権を促進し、そして精神障害を有する人々の死亡率、罹患率、障害を低減することを目標として、その目的に、(1)メンタルヘルスのためのより効果的なリーダーシップとガバナンス、(2)地域ベースの環境におけるメンタルヘルスサービスと社会ケアサービスの統合、(3)プロモーションと予防のための戦略の実施、(4)情報システム、科学的根拠と研究の強化をあげている。そして(3)の中に、世界の自殺死亡率を10%少なくする(2020年までに)という達成目標を示している。

心の健康、精神的な安定が個々人にとっていかに大切か、がわかる文章だと思います。また厚生労働省のe-ヘルスネットではメンタルヘルスの意味を「精神面における健康のこと。日本語では精神(的)健康、心(こころ)の健康と称されることが多い。精神疾患からの回復だけではなく、社会・職場・家庭等の環境に適応できているか、いきいきと仕事ができているかといったポジティブな部分も含めた意味合いで使われることが少なくない。」と説明しています。

「メンタルが強い、メンタルが弱い」などでよく「メンタル」という言葉が使われていますが、この「メンタル」は「精神・心」そのものを指して使われているような印象を受けます。そして「メンヘラ」という言葉も最近よく見ますが、これは、メンタルヘルスから派生してネット上で作られた造語のようで、心の健康になんらかの問題を抱えている人や精神状態が不安定な人を指すようです。

厚生労働省「こころの耳」サイト内の、うさぎ商事の休憩室〜みんなで知りたいメンタルヘルス〜のなかの「第1回メンタルヘルスってなんだろう?」にも書かれているように、「メンタルヘルス」という言葉は、なぜかネガティブなイメージを持たれることが多いのが現状だと思います。ですが、実際には「心も身体も元気な状態をめざす」ためにメンタルヘルスがとても重要であることを理解していただき、ぜひポジティブなイメージで取り組んでいただけたら良いな、と思います。

仕事や職業生活に関する強いストレス

厚生労働省 労働安全衛生調査(平成30年)結果の概要の中で、労働者調査があり、この中の図を下記に引用します。

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この図からもわかるように、労働者の2人に1人はなんらかの強いストレスを感じながら仕事をしていることがわかります。平成25年からほぼ変わらない割合となっており、メンタルヘルス対策が必須であることが伺えます。また、その内容では「仕事の質・量」が59.4%と最も多く、職場の環境改善や労働時間の適正化のためにもリスクアセスメントを実施してPDCAサイクルを回す中でこのメンタルヘルスにも取り組んで行くことが求められているのではないか、と感じます。

また、精神障害による労災認定も年々増加しており、令和元年度は509件と過去最多となっている、という現状もあります。このことからもメンタルヘルス対策は必須と考えても良い、と思います。

労働者の心の健康の保持増進のための指針

厚生労働省は平成18年3月31日労働安全衛生法第70条の2第1項の規定に基づく、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を示し、各事業場でメンタルヘルス対策を推進するように求めました。その後、ストレスチェック制度の制定に伴い、平成27年11月30日に改正されました。その内容が、「職場における心の健康づくり」にまとめられています。この指針の趣旨を下記に引用します。

本指針は、労働安全衛生法第 70 条の 2 第 1 項の規定に基づき、同法第 69 条第 1 項の措置の適切かつ有効な実施を図るための指針として、事業場において事業者が講ずる労働者の心の健康の保持増進のための措置(以下「メンタルヘルスケア」という。)が適切かつ有効に実施されるよう、メンタルヘルスケアの原則的な実施方法について定めるものです。

労働安全衛生法第 69 条
事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるよう努めなければならない。

この指針では、メンタルヘルスケアを実施するための具体的な方法などが詳細に書かれています。その中で重要になるのが、各事業場ごとに、衛生委員会などにおいて十分に調査審議を行い「心の健康づくり計画」を策定するとともに、「4つのケア」を効果的に推進し、ストレスチェック制度の活用や職場環境等の改善を通じて、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ「一次予防」、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を実施する「二次予防」、メンタル不調となった労働者の職場復帰の支援等を実施する「三次予防」が円滑に実行されるようにする必要がある、ということです。

以上となります。次回は4つのケアとメンタルヘルスケアの具体的な進め方について書いていきたいと思います。


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