NPOのアウトカムが定まらないよ

普段NPOを事業評価(もどき)を実施している者です。この活動が、ここ数年の生業です。

ヒト/モノ/カネを投入した結果、受益者にどのような変化をもたらしたのかを「アウトカム」と呼ぶのですが、これがなかなか定まっていません。
僕の脳内で定まらない、という意味ではなく、教育/福祉業界全体で全然定まっていない気がします。

個人的に子ども福祉のアウトカム評価に携わることが多い&僕のバックグラウンドが心理学なので、ここでは子ども福祉に関する心理的概念の変化を例示しますね。

行政やNPOの調査報告書を読んでいると、「子どもの自己肯定感の増加」が強調されることが多いのですが、いくつか理由があってこれは全然推せません。

第一に、ある個人の自己肯定感の増加が、その個人の将来の社会的達成や個人の幸福などを予測するというエビデンスがどうやらほとんど無さそうだからです。あったとしても、ちらほら……程度だった気がします。
アウトカムとして設定するなら、頑健な結果が出てる概念にしたいので、やっぱり推せません。むしろ自己肯定感の高さがかえって悪さをするという研究もあります。

第二に、子ども福祉に興味のない人からすると「よく知らない子どもの自己肯定感のために俺ら/私らの税金をいくら使うんですか?」って怒られそうだからです。子どもの自己肯定感があがったら国益としてこうなるのです、みたいなロジックがどう考えても編み出せません。

もっとこう、事業のアカウンタビリティを果たせるような公共性の高いアウトカムを狙っていかないといけないのでは、なんて思うわけです。

最近個人的にいいなと思っているのは「ストレスレベルの低減」です。
社会経済的地位と精神衛生面は関連していることがしばしば確認されているので、たとえば「子どもの貧困」「シングルマザーの貧困」などと非常に相性が良いのかもしれません。。

また、厚労省の発表によれば、年々うつ病で病院を受診する人が増えてきているそうです。
これがもし社会保障費を圧迫していたり、労働者のパフォーマンスを妨げているのならば、「ストレスレベルの低減」をアウトカムにするのは大義になる気がしています。カーボンクレジットみたいに、低減量を資金調達の手段にできるとかね。

それと、アウトカムを成立させたときのインセンティブ設計を上流から作れたらなと思います。せっかくNPOが成果あげても、外部に公表するメリットがあまり無いのがこの業界の課題な気がしています。ちょっと引っかかるようなことを書いて、叩かれると怖いし。

学術研究者なら論文を書いて、こと細やかに報告するんですけどね。論文を世の中に出すことがインセンティブですからね。
こういうpublication gameの原理をこの界隈に持ち込まなくてもいいのですが、少なくとも行政や団体間で知財を共有するための方法や場づくり、動機付けは必要です。クローズドな場で十分ですので。

以上です。おやすみ。

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