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山塚りきまるの『なんかメロウなやつ聴きたい』第103回 マック・デマルコっぽいことを大昔にやってた人特集part2


はいどうも。

過去に、“マック・デマルコっぽいことを大昔にやってた人特集”と題してこんな記事を書いたんですよ。


マック・デマルコって誰? という人に対しての説明は一切割愛させていただきます。もしくは割礼させていただきます。

まー要するにリヴァーヴのかかったソフトなギターにゆる〜いヴォーカルが乗っかった音数の少ないミッド・テンポの気だるい音楽ですよ。

で、音楽に限らず絵画でも科学でも何でもそうですけど、あらゆる事柄は過去の参照によって発展し進歩するんで、ああいう音楽を突然変異的にマック・デマルコが発明したワケじゃありません。過去の音楽にもああいったエッセンスは当然存在していたワケです。

我々が『同じだけど、違うやつをくれ。』という欲求を満たそうとするとき、ついつい現代ばかりに目が向いてしまいますが、過去にもちょいと目をやれば、可能性はさらに広がります。

というワケで、山塚りきまるの『なんかメロウなやつ聴きたい』第103回は、“マック・デマルコっぽいことを大昔にやってた人特集part2”と題して、マック・デマルコっぽいことを大昔にやってた人たちの音楽を、皆さんとともに耳を傾けていきたいと思います。みんな、ついてきてね!!




一曲めは、チェット・アトキンスで『タミー』。

はい、かのビートルズのジョージ・ハリスンの永遠のアイドルであり、あまりに好きすぎて同じ型のギターを使っていたっちゅうカントリー・ギタリストの大御所、チェット・アトキンスですね。

これは彼の14枚目のアルバムで、1961年作です。確かチェット・アトキンスの中で一番売れたアルバムじゃなかったかなあ? ビルボート・チャートでも7位を記録しています。

で、どうすかこのサウンド?

深いリヴァーヴのかかった柔らかなギターときたらまるでマック・デマルコの世界観そ・の・ま・ん・まですよね。1961年でこのギターサウンドは相当革新的だったと思いますね。

自宅スタジオで仕上げたデモを元に、大手ビクターのレコーディング・スタジオでセッション・ミュージシャンと共に練り上げ、さらに再度自宅スタジオで重ね録りを行ったっていう、非常に手の込んだアルバムなんですけれども、ジャズ・スタンダードからトラディショナル・カントリー、30年代のブロードウェイなどなど様々なジャンルから取り上げた楽曲をチェット流に料理した、最高傑作との呼び声も高いマスターピースであります。心して聴け。



二曲めはヴァーナ・リンツで『アンダーウォーター・ボーイ』。

スイスの老舗メーカー、リンツ・チョコレートの令嬢(らしい)であり、ミュージャンのみならず、ジャーナリスト、言語学者、著作権エージェント、通訳者、さらにはそのルックスを活かしてモデルとしても活躍したスーパー・マルチ・タレント、ヴァーナ・リンツのファーストからの一曲です。

まぁファーストつってもこのひとアルバム二枚しか出してないんですけどね。

ブリティッシュ・ポップのメイニアであればどなたもご存知であろうトット・テイラーの奥さんであり(こんときはまだ結婚してなかったんだけど)、作曲クレジットは全てトット・テイラーと彼女の共作となっております。で、“国際女スパイ”っていう峰不二子みたいな謎設定のもとに書かれた楽曲は、1983年という時代を如実に表したニュー・ウェイヴ〜シンセ・ポップ〜ポスト・パンクの流れを汲む内容なのですけれども、これが今聴いても本当に素晴らしいですね。

特にこの『アンダーウォーター・ボーイ』とかもう発想が完全にマック・デマルコ以降のインディ・シーンですよね。スネアの音やベースライン、エフェクトのかかったヴォーカル、どれを取っても大変な現代性に溢れています。今こそ聴かれるべき名曲だと思います。



三曲めは、バンキー・アンド・ジェイクで『イット・ハプンズ・アゲイン』。

フォーク・シンガーの都、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジで活動していた黒人女性SSWのアンドレア・スキナーと、男性SSWのアラン・ジェイコブスによるフォーク・ロック・デュオ、バンキー・アンド・ジェイクでございます。

これは彼らのファースト・アルバムに収められた一曲ですね。1968年作。

“ゴキゲン”といった感じの掛け合いのヴォーカルに、牧歌的なメロディ、ゆったりとした演奏はマック・デマルコを感じさせるものがあります。ブルージー&トロピカル、珠玉の逸品であります。

ちなみにこのひとたちが1969年に出したセカンド・アルバムのタイトル、『L.A.M.F.』って言うんですよ。

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ジャケかっけー。この『L.A.M.F.』ってタイトルってのちにジョニー・サンダースが引用したんじゃないかと思うんですけどどうですかね?


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点の打ち方や紫を基調としたカラーリングまで同じ。

ジョニー・サンダースのソロ『ソー・アローン』で聴けるSSW的資質や、アラン・ジェイコブスがもともとマジシャンズって名前のバンドでニューヨークで活動していたことを考えると、ジョニー・サンダースがバンキー・アンド・ジェイクからタイトルを拝借したって考えてもしとっつもおかしくないと思うんですよね。

とまれ、バンキー・アンド・ジェイクスはファーストもセカンドもどっちも最高なのでぜひぜひぜひぜひ聴いてみてください。




四曲めは、スティーヴ・エリオットで『イグジスト』。

最後は宅録ソウルのレジェンド、スティーヴ・エリオットでございます。

ロサンゼルスに生まれ育ち、レコ屋通いが趣味だった少年は10歳にしてなんと映画デヴュー、撮影技法や編集技術のみならず録音技術なども身につけました。

そしてその経験を生かし、ほぼセルフ・プロデュースで宅録で制作したのがこの自主制作盤『トゥルー・イメージ』なのでっす!! 

何曲かでゲスト的に他のミュージシャンが参加したりしてますが、この曲は全部一人でやってますね。ローファイなドラムマシンを稼働させながら、シンセを自ら演奏しつつファルセット全開で歌い上げる、そのゆる〜く弱々しいソウル・ミュージックはまさにベッドルーム・ポップの先駆といえます。

1981年作ですが、リリース当時よりむしろ今の方が間口の広いアルバムなのではないでしょうか。この方は二枚アルバム残してますけども、どちらも本当に素晴らしい内容なのでぜひ両方とも聴いてみてください。




はい、というワケでいかがでしたでしょうか、山塚りきまるの『なんかメロウなやつ聴きたい』第103回、マック・デマルコっぽいことを大昔にやってた人特集part2、そろそろお別れのお時間となりました。次回もよろしくお願いします。お相手は山塚りきまるでした。



愛してるぜベイベーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!

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