VTuber 戸定梨香のPR動画における性的対象化についての考察

全国フェミニスト議員連盟
9月4日 6:23  · 
松戸警察、松戸東警察が「千葉県松戸市ご当地VTuber戸定梨香」を採用

これを受け、女性・女児を性的対象とみなす固定観念に沿った描き方を、公的機関である警察が使うのは問題と捉え、公開質問状を送付しました。
https://www.facebook.com/afer.fem/photos/pb.750861658356837.-2207520000../4153665824743053
千葉県警本部、松戸警察署、松戸東警察署、千葉県、松戸市、松戸市教育委員会宛の公開質問状を提出。およびその回答について。
https://afer-fem.org/?p=1416

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千葉県警公式YouTubeチャンネルから削除され、VASE公式YouTubeチャンネルで公開されている該当のPR動画


「松戸警察、松戸東警察と戸定梨香のPR動画への質問状の考察」において述べた内容について、「性的対象物として描写されている」との指摘が適切であるかを掘り下げて考察する。

性的対象化 - Wikipedia

性的対象化の文脈において性的表現物、ポルノグラフィは人権侵害を伴う「性的に露骨で、かつある集団(女性や子供など)を従属的・差別的・見世物的に描き、現にその集団に被害を与えている表現物」とされる。
即ち抗議文の内容は戸定梨香の描写が「性的に露骨」で「女性、子供を従属的・差別的・見世物的に描き、被害を与えている」と断定するものである。(質問状の文面には「性的に露骨」であるとする記述は存在しないが、性的対象物であるとの指摘は本来的にその意を含むものである。)


■「女性、子供を従属的・差別的・見世物的に描き、被害を与えている」かについて
該当のPR動画において戸定梨香は警察署との共同事業の一環として交通規則の解説と啓発
を行った。
その内容に加えて公開状況や関係者の意向等周辺情報を考慮しても「従属的・差別的・見世物的」な要素が皆無である事に議論の余地は無いものと思う。
抗議文の内容は戸定梨香の外見への指摘に終始しており、それのみを以て「女性の定型化された役割に基づく偏見及び慣習を助長する」としている。

株式会社Art Stone Entertainment 代表・板倉節子氏の声明
https://twitter.com/ASE_Itakura/status/1436581510274969601


■「性的に露骨」であるかについて
具体的に言及されている箇所は「セーラー服のような上衣で、丈はきわめて短く、腹やへそを露出しています。体を動かす度に大きな胸が揺れます。下衣は極端なミニスカート」との指摘である。文中「腹、へその露出」、「胸の揺れ」、「極端なミニスカート」の各要素について順に考察した。
(「大きな胸」との表現が指す意図は不明瞭であるが、戸定梨香が特別に大きな胸ではない事と、フェミニズムを提唱する団体からの声明において女性の大きな胸自体が性的であるとするかの様な差別的意図では使われないと思われる事から、本考察でこの記述に言及する事は差し控える。)


・腹、へその露出
戸定梨香の衣装は上位の裾とスカートの間までが開いており、へそ辺りの上下数cmに渡り腹を露出している。該当の動画には殆ど映っていないが、背中と肩と腋も露出している。確かに通りを歩いてすぐに目にされる様な一般的な服装とは言えない。
服装による露出の適法性をどう判断するべきであるかは一般的に議論が分かれるものであるが、結論から言えば本件においてはその限りではない。
公共の場で「性的に露骨」な露出を行った場合、迷惑防止条例、軽犯罪法第一条、刑法第174条(公然わいせつ罪)といった法令(映像作品としては刑法第175条)に抵触する事になるが、
当の交通安全啓発活動戸定梨香の所属プロダクション「VASE」と警察署の協議のもとで企画された事業であり、法令の取締り当局である警察が適法性について判断を行った上で進行されている事は明白である。
また昨今、腹部を露出する事自体が性的訴求を意図した表現として使用された作品は市場に殆ど存在しない。
何故なら、標準的な人間は創作物の露出された腹、へそを見る事によって性的欲求を刺激されたりはしないからである。
女性の腹部を露出させた服装は、性的訴求とは異なる美術的意図を持ってデザインされたものであり、「性的に露骨」として違法性を論じられる類の表現ではない。
その事実を否定して犯罪的であると断ずるならば相応の根拠を示すべきである。


・胸の揺れ
戸定梨香の胸が揺れているのは事実である。
それが「性的に露骨」であると認めるに足るものとは言えないが、
事実として露出や行為描写を伴った胸揺れ、乳揺れという手法は性的訴求を意図した創作物に使用されるものではある。
その一方で、それは人物の躍動感を表現する意図で使用される手法でもあり、その際は殆どの場合に露出を伴わない。
戸定梨香の描写を観た時にそれがどちらの意図かは視聴者の主観であるが、
実状としては特に露出も無い着衣の胸を揺らしたところで性的訴求効果は見込めないものと思われる。


・極端なミニスカート
極端という語が何を指しているのか不明瞭であるが、長さを考えると戸定梨香のスカートは大腿部の半分程の丈であり、ファッションとしてごく一般的な長さである。また、裾が翻る様には作られておらず、短い事で下着やその近くの肌が露出されるといった事も無い。これで性的欲求を刺激されるのはごく一握りの極端に特殊な変態だけである。
極端なミニスカートついては論拠が乏しく、そもそも性的対象化を示す箇所として指摘されている訳ではないのではないかと思われる。
ミニスカートであるという一点に拘った個人的な印象による断定という、余りにも稚拙で感情的に過ぎる論旨ではないと思いたい。
いずれにしても「性的に露骨」であると認めるに足るものではない。

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■最後に
戸定梨香の交通安全啓発活動に対して全国フェミニスト議員連盟から出された声明に対する考察は以上である。
これを読む全ての人が批判の内容を冷静に判断し、否定と肯定双方の立場にとって歩み寄りの一助となってくれれば幸いである。
筆者自身はフェミニズム、反女性差別の理念に賛同する者であり、
この思いからも、必ずしも反フェミニズムに与する訳でない多くの人々を含む市民からの質問状への批判の声を全国フェミニスト議員連盟が真摯に受け止め、高潔なフェミニズムの理念を損なわない態度を示してくれる事を切に願う。

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