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山田詠美のゴールデン街とMUGEN

 今週は、この作家のMUGENでの思い出が語られているが、先週は、ゴールデン街で見聞きしたことが書いてあった。

 彼女はゴールデン街でもバイトをしながら、売れている作家とまだ売れてない作家の会話を観察し、こうスケッチしている。

 すでに売れている作家が、まだ売れてない作家について言う「あいつは才能あるのにまだチャンスに恵まれてないだけなんだよな」みたいなことば。これは何だかいやらしい、と。そして、まだ売れてない作家の酔い潰れての泣き言の「無限のループ」。これは何だか卑屈だ。そんなことが書いてあった。

 たしかに、そんな光景は飲み屋に行くとよくあったなと、昔を思い出した。
 ゴールデン街は、私も友人に誘われて行ったことがある。そこで一杯ひっかけて、それから真夜中近くになって、ラブ・チャイルドとかベイビー・ラブなど、シュプリームスの音楽を繰り返し猛烈な音量で流している店に入った強烈な印象が残っている。
 山田さんが言っていることは、地方都市の飲み屋街でも同じだった。さしずめ私などは、別に作家の世界を目指していたわけではないが、これを読んで、「あいつは〇〇なのにチャンスに恵まれてないだけなんだよな」と言われてた口かもしれない。
 私も多くの凡人と同じく、今に至るまでチャンスはもちろん、才能も才覚も、もともとなかったのに気づかなかっただけなのだ。
 いや、このことばもいやらしい無限のループ、卑屈な泣き言になってしまいそうだ。もうやめよう。

 今週は川端康成も来ていたという赤坂のMUGENについて。山田さん、有名になったあと、ある出版社の編集者と同行してここを再訪したとき、「ごりっぱになられて」と店の人に言われたそうだ…
 MUGENは、山田詠美が、「ブラザーズ」や「シスターズ」と友だちになったところ。ラブアフェアも始まる。

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