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さいごの

今日、ムスメが帰ってきて開口一番「今日の昼休みが最後の昼休みだった!」と叫んだ。

なんの話か聞いてみたら、「明日から卒業まで、毎日授業は昼で終わりなんだって」と。おいおい。卒業までって、あと2ヶ月あるけど?

緊急事態宣言が福岡県にも追加で発出された。学校の動きは大きく変わらないが、3年生は受験期なので、大事をとって短縮授業にするらしい。帰りの会で、先生から「ということで、今日の昼休みがみなさんの最後の昼休みでした」と言われて、クラス全員が「あ”ーーーーー!!!」と叫んだそうだ。

最後の昼休み、最後の給食、最後の掃除、最後の体操服、最後の図書貸出、最後の宿題、最後の授業、最後のホームルーム、最後の挨拶、最後の上履き、全部、全部、最後になるのだ。しかも今日の「最後の昼休み」みたいに、これが最後だから、と自覚できないまま、後から「あれが最後だったんだなあ」と思うこともあるかもしれない。もっとちゃんと味わっておきたいこともあると思う。友だちと一緒にいられる時間も激減する。昨年度の卒業式は30分間だったそうだが、今年も同じか、もっと短くなるか、リモートになるか、と心配だ。

ところで、わたしの「中学生最後の思い出」は、卒業式の日に「はよ帰れ」と先生に声をかけられたことだ。誰もいなくなった校庭をぼんやりと眺めていたら、通りかかった先生が、「もう誰もおらんやろ。はよ帰れ〜」。それはもう、式典とか最後の記念とか、そういう「ハレ」ではなく、全くもって「ケ」の空気感で、先生の日常業務の声だった。わたしにとって特別な日も、この人にとっては日常の一部にすぎないのだ、と思いながら家路についた。自分以外の世界は平常運転だったのだと思うと、全部が平べったい気持ちになった。卒業もゴールではなく、通過点でしかない。

そう考えると、これはこれでいいのだ。ムスメよ。明日から卒業まで、昼休みのない日常を楽しむがよい。

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