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給料日前

わが家は現在、給料日前で、緊縮財政。冷蔵庫の在庫を一掃しつつ、買い置きしていた乾物やインスタント物をじわじわ食べている。今日のメニューは生春巻きだ。2ヶ月前から冷凍庫でカチカチに凍って眠っていた「えび」と「豚肉」を解凍して、野菜室の残り野菜をかき集める。「鶏そぼろ」「かぼちゃの煮付け」「小松菜のおひたし」の作り置きを並べて、あとは白ごはんを炊いておけばなんとかなるだろう。

「わー!豪華じゃーん。」と、えび好きのムスメは喜んだが、ガッツリこってり系のごはんが好きなオットは「食べるものがない」と言う。カチンときたが、彼の言語の「〜がない」は、「少ない」と同義だと、この15年で習得した。ふふん。食べられるものを食べておくがよい。

しぶしぶ野菜を食べていたオットが、ふと顔を上げた。「ごはんちょうだい」と、皿をだす。そしてすごくいいことを思いついた表情で「焼肉のタレを出してよ」と言った。

白ごはんに焼肉のタレ。生春巻き用の豚肉や野菜を乗せて、ワシワシと食べ始めた。「うまっ。うまっ。これはうまい。このタレだけで3杯はいける」と喜びをあらわにし、おかわりをした。「いいなー。うまいなー。このタレはどこのだ?」と、ラベルをじっくり読んでいる。これは先週、ムスメの友だちが集まって夏合宿をした時に買ったものだ。

「実はこの焼肉のタレは「特選」という、もうワンランク上の種類もあるのだよ」と教えたら、「え!?これだけうまいんなら、特選はもっとうまいに違いない。どうして特選を買わなかったんだよ」と言う。「200円も高かったからね。」と理由を述べると、「次はぜひ特選を!」と希望を述べた。

焼肉のタレはボトルにあと半分くらい残っていて、これが全部消費されないうちは、『特選』を買うわけにもいかない。いや、そもそも、焼肉のタレは肉を食べる時に使うものじゃないのか。気づけば、いつのまにか白ごはんにかけて食べる液体のふりかけとして考えている自分がいた。これが『給料日前』の現実なんだな、としみじみ。



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