傷つく人
今日、娘のメガネのレンズを交換するために家族で出かけた。目的地がもう目の前、というところでハタと気づく。娘は学校以外ではメガネをかけていない。だから、気づくのが遅れた。「ねえ、メガネ、持ってきてる?」娘は首を横に振る。「最低」思わず口をついて出た。
出かける前に言っておけばよかったのだ。「メガネ屋に行くから、メガネを忘れないようにね」その一言があれば、娘もメガネを忘れなかっただろうし、夫から罵倒されずに済んだ。夫も穏やかな日曜日を過ごせたのだ。
夫は激昂し、娘を激しく罵った。わかる。今日だけじゃないのだ。娘は往々にして、人の話を聞いていないために、ミスが多い。今日も朝から何度も声をかけたが、ほとんどが上の空だった。
夫は、堪忍袋の緒が切れたことを表すために「人間性を否定するなと言われているが、もう完全に否定する。お前なんか全否定だ!」と叫んだ。
娘は傷ついている。しかし、夫もまた、深く傷ついているのだ。手負いの熊みたいに荒れている。わたしは困った。娘を庇えば、味方をなくした夫はますます荒れるだろう。しかし、夫を見守っていたら、娘の自尊感情は死ぬかもしれない。
どちらの傷にも、わたしは共感する。怒りは幸せを生まない。そのことだけを実感した。
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