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SLITHER

inktober2021 30日目のお題は「SLITHER」

ずるずるとかツルツルとか、滑る表現らしい。スリザーと読むらしい。ハリーポッターに出てくる「スリザリン」は、蛇の紋章だから、そういうこと?

さて、オットの母は動物が大好きで、これまでに様々な生き物を飼ってきた。さすがにヘビは飼ったことはないらしいが、「長いの」と呼んで、特に嫌がる様子でもない。

まだオットが子どもの頃、玄関に鳥籠を置いていたそうだが、ある日お母さんがドアを開けっぱなしにしていたら、鳥が暴れる物音がした。見に行ったら、ヘビが玄関から入ってきて鳥籠の中にいた。お母さんは「あんた、そこは入っちゃいけないよ。帰りなさい」と言ったら、スルスルと出て行ったらしい。

そういえば、オットが生まれるずっと前の話もある。ある時、お母さんはお父さんの実家に滞在していた。離島のコミュニティは濃く、噂話は高速通信である。島にきた嫁の一挙手一投足は、良し悪しにかかわらず、人々の興味を引いた。

畑に水を撒くために、地面に穴を掘って水を貯めた場所がある。お母さんが畑仕事をしていると、その小さな池の周りをヘビがぐるぐる回っていた。なんだろうかと覗いてみたら、池の中に小さなヘビが泳いでいるが、地面に上ろうとしては、ポトリと落ちる。ああ、これは池に落ちたんだなと思ったお母さんは、棒切れを探してきて、池の中に差し込んでやった。小さなヘビはその棒を這い上がって、池から脱出できた。親子だったのだろう。大きな蛇と小さな蛇は揃って草むらに逃げていった。「良かったね」とお母さんが家に戻ったら、お姑さんが「あんた、ヘビを助けたらしいな」とすでに知っていたという。「わたしが家に帰るよりも先に、話が帰りついとったわ」とお母さんは笑ったが、「誰がどこで見よるかわからんけねえ。恐ろしい」と小声で言った。

さて、後日、お母さんがまた畑仕事をして一休みしようと丸太に腰かけたら、ヘビがやってきたそうだ。よく見ると、大きなヘビは背中に小さなヘビを載せていた。「あれはわたしが助けてやったけぇ、子どもが無事やったよっち、おんぶして見せにきたんやろうねえ」とお母さんは言った。へえ、ヘビはおんぶするんですかねえ、と聞いたら「初めて見たよ。わたしも知らんかったねえ、おんぶするなんて」と大真面目に答えた。

おんぶするヘビは珍しくて面白い話だな、とは思ったが、やはり実際にヘビに遭遇するのは遠慮したい。





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