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せつめい

子どもというのは、いや、子どもだけじゃない。人というのは、わたしの思い通りには動かないものである。自分の思い通りに動かそうなんて、おこがましい。わかってます。はい。

しかし、わたしの思い通りに動かしたい時もある。目的、つまりゴールがある企画の場合、プロセスはいろいろあっても、ゴールにはたどり着いてもらいたい。

高校生の時、わたしは初めて「切り貼り」(正式名称かどうかは知らないが)という技法を教えてもらった。
紙と紙を継ぎ足して貼るとき、どうしても上の紙と下の紙の境目が盛り上がってしまう。この重なりを切り落として、ぴったりの位置に貼る方法が「切り貼り」。先生が魔法使いのように、カッターとセロハンテープでビシッと継ぎ目がわからないほど精密に貼ったところを見て、「おお〜」と感動した。なぜなら、それまでのわたしは、紙というものを継ぎ足すときには「のりしろ」が必要で、その部分が盛り上がってしまうものだと思っていたからだ。その常識をサラッと塗り替えてしまった先生を尊敬した。スッゲー。こんなテクニックがあるのか。教えてください!こうですか?あ、こう?なるほど!わたしはそのやり方を覚えたことで、仕上がりの美しさにこだわるとはこういうことか、と学んだ。

先日、フリースクールの学習で、大きなパネルに紙を貼っていく機会があって、その紙にはイベントのタイトルの文字が書かれていた。わたしは「今こそ、切り貼りを!そしてあの感動をこの子たちにも!」と意気込んだ。

「まず、こことここを短いテープでとめて、裏返しまーす」とやり始めたら、「え?ここに上から貼るんじゃだめなんですか」と言われた。「そりゃ、だめじゃないんだけどさ。重なりがかっこ悪いじゃない?」と言ったら、「気にしません」と返ってきた。もう、その言い方。そんなの面倒くさいじゃないですか、という態度。このごろわたしの心は骨粗しょう症で、すぐに折れやすい。心の中でピキ、と音がして「あ、別に絶対そうじゃなきゃいけないってわけではないよ。別に気にしないならいいよ」とその場を離れた。今回じゃなくてもいい、また別の機会にしよう、と思った。

パネルが仕上がって、その子が言う。「あ、ここんとこ、重なったところが盛り上がってて気になる」うん。いいところに気がついた。でももう遅いです。貼り込んだパネルはガッチリタイプの粘着性なので、はがすことができません。「そうねー、そうならないようなやり方をお伝えしたかったんですけどね」と言ったら、「こうなるって、先に言ってくださいよ」と言われた。説明が足りなかったのか。そうか。それは済まなかった。

別の学習で、校外学習の行動プランを練る機会があった。行き先は『ららぽーと』だ。出かける目的も伝えたし、それを自分たちでやることの意義も伝えたつもりだ。「えー。ノープランでいく方が楽しいし、行った先でいろいろ考えた方が効率的〜」と言われた。まあそういう考え方もあるね、とうなずいたら、そこにとどめをさす一言をクラスの重鎮である男子が言う。「商業施設って、そこに行くことが目的で、何も考えずに行くんじゃないんですか?行ってからいろいろ見て回るのが面白いのでは?」

違うんだよー。そういう目的じゃないんだ今回は。校外学習なんだよー。また説明が足りないんだな。先に言えっていうことが言えてないんだな。先に言ったら、思い通りにやってくれるかというと、これはまた別の問題だが、わたしはとにかく、説明が下手なんだな。そのことが学べたので、ありがたいと思うことにする。どうやったら伝わるのかを考え続けることにする。







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