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KNOT

inktober2021 4日目のお題は「Knot」。

これは、『二重叶結び』という縁起の良い結び方で、お守袋を綴じる時に使われている。去年、ムスメとああだこうだと言いながら、ようやく完成できた結び方だが、もうすっかり忘れてしまっている。その時の投稿がこちら。

結び目といえば、結索。子どもの頃、ガールスカウトで何種類も教えてもらったが、ほとんど覚えていない。そもそも、「電車結び」とかなんのために使うのか全くわからない。結び方だけ習っても、使うことがない結び方は記憶に残らない。

わたしが覚えているの2つだけ。「巻き結び」と「もやい結び」である。巻き結びは、棒状のものを束ねたり、立木などにロープをくくりつけて、洗濯物を干したりするのに使う。キャンプの時に大変重宝する結び方だ。
もやい結びは、もともと船を係留するための結び方らしいが、わたしは人命救助に役立つ結び方だと習った。輪っかのサイズが変わらないので、人の胴を締め付けることなく引っ張り上げることができる。

もうずいぶん前のことだが、わたしが庭で細い竹を束ねていたら、父が「ほう。巻き結びができるのか」と驚いていた。「たくさん習ったけどちっとも覚えてなくて、巻き結びともやい結びだけしかできんのよ」と答えたら、父は「巻き結びともやい結びをできる人は少ない」と笑った。

資源ごみに出そうと、新聞を束ねていたら、父が「どれ貸してみ」と自分で結え始めた。「こうして、ここを引っ張ると、こっちが締まる。そしたら、今度はこっちから紐をぐるっと回して、ここにひっかけてから、こっちを引っ張る。ほら」そう言って、父がわたしに手渡した新聞の束は、ガッチリと束ねられていて、揺らしても緩むことがなかった。

半年が過ぎて、この頃ようやく父のことを思い出すようになった。病院にいながら、誰にも看取られなかった最期を、父はどう感じていたのだろうかと考え始めたら辛くなる。

だが、新聞や段ボールを括る時には必ずあの日の父を思い出す。「どれ」と手本を見せて「ほらできた」と差し出した時の笑顔は『娘に何かを教える父親』の顔だった。些細なことだが、今となっては大事な思い出になった。

そうそう、資源ごみを出しに行って「あなたの新聞の束ね方はすごい」と褒められたことがある。父よ、あなたのおかげで褒められましたよ。


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