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またあの夢だ

どうしてトイレの夢ばかり見るんだろうか。

わたしは家族でどこか観光地のような、賑わっているところに出かけている。どこか地方の映画祭のようで、その村だか町だかに点在する上映会場へ、プログラムから選んだ作品を観に行く。季節は冬で、わたしは厚着していて歩きにくい。やがてトイレに行きたくなり、わたしは一人で砂利道を歩きトイレに向かう。

長蛇の列だった。見た感じ、トイレにしてはやたらと大きな建物で、体育館の半分くらいはあるが、とても近代的とは言えない。まるで山小屋だ。押し流されるように中に入ると、祭壇があって、タンカ(チベット仏教のタペストリー)が祀られていた。その前には大きな鈴(りん)が置いてあり、祭壇の隣にトイレの個室があった。トイレの神様を拝んでから入れということだろうか。

わたしの前に並んだ女性が、ドアを開けて中に入ったかと思うと、数秒で出てきた。はやっ。そう思いながらわたしが入れ替わりで中に入る。なるほど秒殺だ。彼女が出て行った理由がわかった。本当に汚い。トイレは洋式だが、一段高いところにあり、靴を脱いで台座のようなところに登らねばならない。その床や便座が、茶色っぽい水で濡れている。スリッパはない。少し悩むが、断念する。真っ白なソックスを汚したくないし、もう少し我慢ができるかも、と思う。個室から出ると、さっきの祭壇の前にも便器があるのが見える。え。オープンだけど、ここでもいいのか?と思い、わたしは靴を脱いで便器を跨ぐ。すると、年輩の女性がすっ飛んできて「あなた、そこはトイレじゃない!降りて!」と叫ぶ。わたしは、あろうことか、仏具の鈴を跨いでいたのだ。

あっぶな。わたしはあわててその場を去る。そう。トイレの夢は、たいてい用が足せない。

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