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子は鎹(かすがい)か、クッションか

オットを怒らせてしまった。

普段は温厚な人を怒らせると、本当にコワイ。わたしは人に怒られるとパニックになる。呼吸がおかしくなって、頭の中が真っ白になる。そこで相手の怒りを鎮めようと何か言っても、空回りをしたり、火に油を注いだりする。だから余計なことはしないようにして、逃げる。ただ、逃げると相手との接点がなくなるから、関係の修復が困難だ。

「お父さん、怒ってるよね」とムスメに言ったら「え?ほんと?」と、キョトンとした顔だ。そりゃそうだ。オットが怒っているのはわたしなんだから。「お父さんを怒らせちゃって…」と言ったら、ムスメがわたしの耳元で「あのね、チョコレート、一枚多く買ってあるよ。譲ってあげようか」と言った。それはもう、わたしの手柄をあなたに譲ってあげますよ、みたいな感じだった。「はい、これ、渡しておいでよ」と差し出された板チョコ。いや、それは無理だよ。あなたが渡しておいでよ。お父さんのために買っておいたんでしょう?「そうか、わかった」と言って、ムスメは元気よくオットの寝ている部屋に飛び込んで行った。「おとーさーん。はーい、これ!」と声がする。「バレンタインだよー」オットが何か言っているが、よく聞こえない。

「…だから、…だって…じゃないか」とぎれとぎれにオットの声がする。二人が居間に入ってきた。オットは機嫌が悪くないように見える。チョコレートをバリバリ食べながら、オットはオンラインゲームを始めた。わたしのことは依然と無視しているが、鋭い矛先がこちらに向いている気はしない。ちょっと息ができるようになった。

ムスメよ、ありがとう。明日は自分でもう少しなんとかするよ。そう思った。

今朝もまだ無視は続いている。ごめん、ムスメ。お母さんは自分でなんとかできないかも。ココロが折れやすいんだ。わが家は、君が明るく笑っていてくれたら、それだけでいい。きっと、それだけでいいんだ。

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