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こんな仕事の仕方をしたい

「こんな仕事の仕方をしたい」
と思った人がいる。
庭師の人である。

私の家はある施設が管理する公園に面している。
野っぱらだったところが数十年前に公園として生まれ変わった。
昔々は料亭だったようで、それはそれは風情がある。
ちょっとした小山があり、石畳をの周りにはたくさんの木々が植わっている。

春先、白梅紅梅が見事に花を咲かせると、春本番、桜が咲き誇る。
美しい竹林では、立派な筍が顔を出す。
初夏、公園はまぶしいほどの新緑に覆われる。
秋は、モミジやイチョウなどの紅葉が美しく、一面落ち葉で埋め尽くされる。どんぐりや松ぼっくり、銀杏など木の実拾いも楽しい。
冬は暖かい日差しの中、冬枯れの木々を見ながらの散歩もいい。
園児が散歩に来たり、小学生が走り回ったり、犬を連れた人が散歩に来たり、いつも賑やかだった。

その公園が近年はなんだか荒れている。
木々が鬱蒼として、草は一面伸び放題でぼうぼうに。
ごみがあちらこちらに散乱している。
夏は植木が生い茂り、スズメバチが巣を作り放題。薄暗い印象で、次第に遊びに来る園児や小学生も少なくなっていった。
いえ、全く整備していないわけではないのだ。
年に2回ほど作業員がわらわらとやってきて、すごい勢いで草刈りもしている。きれいになるんだけれど、それ以上でもそれ以下でもない。
しばらくすると元通り。

もう、しょがないのかな、と思っていた矢先。
最近庭師さんが毎日のようにやってくるようになったのだ。
朝から夕方まで、植木を剪定したり、草刈りをしたり、ゴミを集めたり。

その庭師さんに一度話しかけたことがある。
ベランダの前の植木がすごい勢いで枝葉を伸ばしていて家の中まで日が入らなくなってしまい、困っていたのだ。
「ちょっと切ってくれませんか。」とお願いすると、その方は最近入られたばかりのようで、上の人と相談してきますとのこと。
そして数日後、その方がベランダ越しに声を掛けてくれ、その植物は今はばっさり切る時期に適していないので、梳きますとのこと。
1日かけてそれはそれは丁寧に梳いてくださった。ずいぶんスッキリ!

そして今でも毎日本当に丁寧に作業してらっしゃる。大抵お一人で。多くても二人で作業することが多い。

丸メガネのシュッとした感じの素敵なおじさん風。
たたずまいもなんだか雰囲気があるのだ。

日中のちょうど日が入る時間に、家でコーヒーを飲みながらハサミの音を聞くのがなんとも心地いい。

今日久しぶりに公園を歩いてみたら、あまりの変わり具合にびっくり!
草がきれいに駆られ、植木も伸びた部分がカットされ、スッキリした印象。
もちろんごみはきれいに取り除かれ、石畳にかかる草もない。
その丁寧な仕事ぶりに感動して心が震えてしまったのだ!
「うわ~!これはすごい!。」
言われた仕事をただやるのではなく、時間をかけて自分が納得しながら仕事をしている。植物と対峙し、対話しながらハサミを動かすような、そんな感じ。
「ここはもう少し切りますね。」
「もうちょっとすっきりせましょう。」
そんなやり取りが聞こえてきそうな気配。

同じ草刈り、木々の剪定でもここまで違うのかと、恐れ入ったのだ。
丁寧な仕事ってこうやって人の心まで動かしてしまう。
「きれいになったね。」だけじゃない人を感動させてしまうパワーがあるのだ。

私もそんな仕事の仕方をしたい。



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